人間しかできない領域への追及
「企業は、AIと次世代のチームを築けるか?」をテーマにしたSESSION 3では、NVIDIA 日本代表 兼 米国本社副社長 大崎真孝(以下、大崎)、学校法人ユナイテッド・ワールド・カレッジ ISAKジャパン代表理事 小林りん(以下、小林)、スクウェア・エニックス リードAIリサーチャー 三宅陽一郎(以下、三宅)と、ファシリテーターに森が登壇。本セッションではAI時代に働き方やチームワークがどう変わるのか、教育や人材育成はどう見直されるべきか、次世代のリーダーやチェンジメーカーにとって重要となるスキルや資質について議論を展開。デジタル分野、学校法人、ゲーム業界それぞれの視点から「枠を超え、挑戦していくこと」の重要性が語られた。
「ゲーム制作を行う我々は、AIの活用を人間1人の力をエンハンスするものという角度でとらえている。また常に変化していくエンタメの世界では、クリエイターのキャリアはレールを敷くことができない。そこで何が一本貫けるのかと考えると『これはあの人以外に頼める人はいない』という換えが効かない人材になること。こだわりを強くもちながらAI技術を吸収し、テクノロジーの進化とともに成長し続ける人が必要とされる人材になるのではと思う」(三宅)
「教育現場は、『教育』すなわち教えて育むのではなく、問うて学ぶ『学問』にシフトしていく必要がある。一方的に『教えられる』種類の知識はAIに代替えされていく。自ら『何が問うべき問題なのか』『これからどんな社会になっていくのか』、問いとして立てて考えを深められる人材を育むことが大事だと考えています」(小林)
小林は、自身が感銘を受けた薩摩藩の人事制度を用いて、評価されるべき人材について解説。
「当時、人は5種類に分類されていたそうです。一番評価されるのは『チャレンジをして成功した人』、次が『チャレンジをして失敗した人』、次に『チャレンジをする人を応援した人』。そして4番目が『何もしない人』、5番目が『何もせず文句だけを言う人』。この順番で評価されれば、挑戦して失敗しても、自分の枠を超えて挑もうとする人は自然と出てくる。この最初の3分類に属する人が正しく評価されると、日本の文化の進化につがっていくのではないかと思っています」(小林)
大崎はテクノロジーの観点から「デジタルとAIは共通のプラットフォーム」とし、そこにどのようにアプローチするかで事業開発の手法も変わってくると語った。
「AIに関する多くの論文も世界中から出ている。経営者はこうした情報に対し感度を上げていかなければならない。いざ自社で新たなことに挑もうとしても、腹落ちした情報を持っていないと社員を説得することはできないだろう。また経営者は産業の枠を超えて、自社の強みを活かしながら可能性を追求していくことも大切である。日本の強みは現場力。覚悟を持って現場を信頼し、そこに優秀な人材や技術を投入していくことが重要だと考えています」(大崎)