ニワトリは現代に生きる「小さな恐竜」
ニワトリは、解剖学や分子生物学のエビデンス以外に、行動面や神経系統を見ても、先史時代の先祖を踏襲した特徴を示していることが、Historical Biology誌に2011年12月付で掲載された論文に指摘されている。一例を挙げると、鳥類の移動様式に関する研究から、獣脚類の恐竜との類似点が明らかになっている。ニワトリが走る時の足取りは、小型の獣脚類に近いとされており、はるか昔の先祖がどのように移動していたのかという謎を解明するのにひと役買っている。
ニワトリはまた、親戚にあたる恐竜たちを狩りの達人にした、肉食動物の本能をわずかにとどめている。驚くほどの精度で虫やミミズを狙う様子を見たことがある人なら、獣脚類の卓越した狩猟能力の名残を、そこに認めることができるはずだ。また、家畜化されたとはいえ、多少なりとも野生の片鱗を残しており、恐竜から連なる系譜を思い起こさせる。
科学者たちは、ニワトリやその他の鳥類の研究を通じて、絶滅した恐竜たちの生物学的・行動学的・生態学的特徴に関する知見を得ている。
目立たず謙虚に生きるニワトリたちは、今の世を生きるティラノサウルスの親戚として、長い月日にわたって展開される進化の幅広さ、そしてその曲がりくねった道のりを示す生きた証拠と言える。
化石化した叉骨から、タンパク質の配列、羽毛の生えた先祖まで、エビデンスが描く姿は明確で、ニワトリとティラノサウルスという2つの種に、否定しようのないつながりがあることが浮かび上がる。ティラノサウルスがこの地球上を闊歩することはもうないが、彼らが残した親戚たちは、私たちの家や農園に生きているのだ。
「小さな恐竜」という新たな称号が、ニワトリ自身の日々の生活を変えることはないかもしれない。だが、私たち人間のニワトリに対する見方を変える効果はある。というわけで、次に卵を割ったり、雄鶏がときの声を上げるのを聞いたりした時には、彼らがこの地球上で最も強烈な印象を残した肉食動物の遠い親戚だということを、どうか思い出してほしい。
(forbes.com 原文)