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2024.12.16 14:15

大手ゼネコン勤務から社員16人の家業へ 地域の声から生まれたヒット商品とは

「ものづくりのまち」の大阪府東大阪市に生産拠点を構え、オフィス家具部品を中心に多彩なプラスチック製品をつくる「甲子化学工業」(大阪市)。
 
近年、創業家の3代目で「次期社長」の南原徹也・企画開発部部長が中心となり、「取っ手に触れずにドアを開閉できるアタッチメント」や「廃棄されるホタテ貝殻を原料にした環境配慮型ヘルメット」などの斬新なヒット商品を生み出し続けている。
 
大学卒業後、大手ゼネコンに勤め、安定した人生を歩んでいたはずの南原氏は、なぜ社員16人の小さな家業を継ぐことを決めたのか。きっかけは、親戚からの一言にあった。
 
事業承継総合メディア「賢者の選択 サクセッション」から紹介しよう。(転載元の記事はこちら

効率化された「ものづくり」を武器に、売り上げは年3億円超

──甲子化学工業とは、どのような会社でしょうか。
 
甲子化学工業は、私の祖父・南原清業が1969年に創業したプラスチック部品・製品メーカーです。もともと、衣料品を作っていたのですが、うまくいかず借金を抱えてしまいました。
 
そこで、当時、需要が高まっていた「プラスチックの射出成型」に着目し、新事業に乗り出しました。祖父は「新しい仕事で、親族全体の暮らしを支えていく」という強い思いで事業を拡大していきました。
 
現在は、オフィス家具向けのプラスチック部品を中心に、顧客からの注文に応じた製品を作っています。たとえば、引き出しを開ける取っ手の部分や、ケーブルを出し入れする部分のパーツなどがあります。
 
売上は年間約3億5000~6000万円で、年間約1000種類、1400万個以上の部品・製品をつくる「ものづくり」の会社に成長しました。顧客から受注して図面通りに部品を製造する仕事のほかに、新しい自社製品の開発にも力を入れています。
 
──甲子化学工業の「ものづくり」にはどのような特長があるのでしょうか?
 
一番の強みは、自動化による効率的な「ものづくり」です。私たちは、パート社員も含めて従業員が16名(2024年9月現在)の中小企業ですが、製造をオートメーション化することで安価で高品質な製品を作っています。

後を継ぐ気は全く無かった

──現社長・南原在夏氏の長男で、子ども時代から「自分が後を継ぐ」という思いは持っていたのでしょうか?
 
正直、まったく意識したことはありませんでした。子どもの頃は、プラモデルを作るのが大好きで、「ものづくり」には興味があったのですが、自分の人生と結び付けて考えたことはなかったんです。
 
承継を意識しはじめたのは、高校生になってからです。社会情勢を理解できる年齢になり、不況で会社の行く末が厳しくなっているのを感じていました。
 
本音は、「会社の後を継ぐのは絶対に嫌だ」でした。オフィス家具向けの部品というのは、どうしても景気に大きな影響を受けます。私が経営者になっても、自分の力でできることは少ないのではないかと思っていました。
 
周りからは「将来は跡継ぎだね」と言われることもありましたが、心の中で拒否していた自分がいたんです。
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