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2024.12.16 14:15

大手ゼネコン勤務から社員16人の家業へ 地域の声から生まれたヒット商品とは

──甲子化学工業の事業承継は、プラスチック加工技術という経営資源を活用して新たな事業に挑戦する、いわゆる「ベンチャー型事業承継」の典型と言えると思います。今後はどのような道を進んでいくのでしょうか。
 
課題の近くには、必ずビジネスチャンスがあります。現場とのコミュニケーションを取りながら、軽いフットワークでステップを進めていける、中小企業の強みを生かせるビジネスモデルだと考えています。
 
もちろんその根底には、しっかりとした「ものづくり」の技術が必要。私たちはものを作るのが大好きな人が集まっている会社なんです。社会の課題を解決する「ものづくり」が、甲子化学工業の進むべき道だと確信しています。

SDGsは、単に逆風という側面だけではない

──南原さんが、社長を受け継ぐ時期は決まっているのでしょうか。
 
社長とは、「今後1年程度で進めていかなければならない」という話をしているところです。準備としては、人材の採用を進めて体制を整えていく必要があり、状況によっては2年ほど先になる可能性はありますね。
 
──経営者として、「利益直結」ではない、社会課題の解決やSDGsの考え方を社員に浸透させていく難しさはどこにあると感じていますか?
 
「社会課題の解決」と言われても、昔からいる社員にとっては伝わりにくいものです。しかし、私たちが長年取り組んできたオフィス家具の部品製造という仕事は、これから次第に成り立たなくなっていくという現実があります。リモートワークの浸透でオフィス自体が減少して、オフィス家具の需要は確実に減っていくはずです。
 
さらに、プラスチックを多く使用するデザインには、SDGsの考え方に反するという指摘もあり、たしかな逆風が吹いています。その逆風の中で、エコプラスチックなどの社会課題を解決する自社製品を開発し、お客様の反応に触れることで、社員も時代の変化を感じ取っていってくれると思っています。
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──南原さんは、大手ゼネコン企業から転職して事業承継への道を歩んでいます。振り返ってみて、自分の判断をどう評価しますか?
 
私は、親戚からかけられた「自分だけが良ければ、良いわけじゃないんだよ」という言葉から自分の人生を見直し、事業承継を決断しました。あらためて振り返ると、その一言は自分にとって正しかったと考えています。
 
それは、「社会課題を解決する」という甲子化学工業の思いにも通じています。会社の利益だけを考えていてはいけない。社会課題を解決するために、必死に「ものづくり」に取り組んで、結果として利益が生まれていく。それこそが会社として、理想の在り方なのではないでしょうか。

南原 徹也◎1987年6月大阪府大阪市生まれ。2010年3月、関西大学を卒業し、大手ゼネコン企業に入社。建設現場での施工管理・大型機械の設置計画などの仕事に従事する。2019年、甲子化学工業株式会社に入社し、製造部に配属。2021年、新設された企画開発部の主任を経て、現職に就任。取っ手に触れずにドアを開閉できるアタッチメントや、ホタテの貝殻から作られた環境配慮型ヘルメット「ホタメット」の開発を手掛ける。
 
(本記事は、事業承継総合メディア「賢者の選択 サクセッション」の記事前編後編を編集しています。)

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