インドネシア北スマトラ大学医学部のセリア・ハリム博士が率いる研究チームは米科学誌プロスワンに掲載された論文で、ウイルス性呼吸器疾患に対する食事の防御機構は、複数の研究によって認められているとした上で、マスクなどの個人防護具や社会的距離を置く規制を緩和する国が増えつつある中、食事療法は実行しやすく、長期的な効果をもたらす可能性があると述べた。
研究チームは、合計5万2670人の新型コロナウイルス感染症患者を対象とした3件の観察研究を分析した。それぞれの研究では、地中海地方の伝統的な食事が同感染症の症状に対して及ぼす効果を調査した。
それによると、オリーブ油や果物、ナッツ類を多く取り、赤身肉や穀類、アルコールの摂取を適度に抑えている人ほど新型コロナウイルス感染症のリスクが低下した。また、野菜や果物、豆類やナッツ類、魚、全粒穀物(訳注:玄米など未精製の穀物)の摂取量が多いほど、同感染症で重症化する確率が低下するなど、新型コロナウイルス感染症のリスクと逆相関の関係にある食品があることが示された。
炎症は、新型コロナウイルス感染症の進行や重症化の重要な因子として広く認識されている。最初の自然免疫反応の後、「サイトカインストーム」と呼ばれる制御不能な強い炎症反応が起こることがある。サイトカインストームは、高レベルのサイトカインによって引き起こされる過剰な炎症を特徴とする。
オリーブ油や魚といった地中海地方で日常的に消費される食品には、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸が豊富に含まれている。今回の研究では、これらの不飽和脂肪酸が感染症と闘う免疫系を刺激するのに役立つ特性を持っていることが強調された。特にバージンオリーブ油には、イブプロフェンに匹敵する強力な抗炎症作用を発揮するフェノール類が含まれている(訳注:バージンオリーブ油とは、オリーブの実だけを原料とし、加熱や化学処理を行っていないものを指す。)同様に、豆類には、ペプチド、ポリフェノール、サポニンが含まれ、これらも抗炎症機能を持っている。