本稿では、シティグループの直近の業績動向と、今後の見通しを解説する。
直近の業績動向
シティグループの2024年第3四半期決算は市場予想を上回った。収益は前年同期比1%増の203億ドル(約3兆800億円)、純利益は同約8%減の32億ドル(約4900億円)だった。投資銀行業務とウェルス・マネジメント業務からの収益が増えたことによって全体収益は増加したものの、与信費用の増加と貸倒引当金繰入額の増加により利益は減少した。銀行部門全体の収益は、投資銀行業務からの収益が31%増えたことに牽引され、前年同期比18%増となったが、利ざやは縮小し、純金利収入は同3%減の134億ドル(約2兆300億円)となった。マーケット部門では、株式関連業務による収益は前年同期比32%増、ウェルス・マネジメント業務による収益は同9%増となった。過去3年間において、シティグループ株の年間リターンはいずれも市場全体を下回っている。シティグループの年間リターンは、2021年に1%、2022年にマイナス22%、2023年に19%だった。
今後の見通し
今後、事態は好転する可能性がある。9月に始まった米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げもあり、同社の純金利収入は回復する可能性がある。また、個人向けローンの延滞がある程度安定してきており、これらのローンによる潜在的な債務不履行や損失をカバーするために十分な引当金を計上していることを示した。シティはまた、より良いガバナンス体制の導入や、データ管理を含むプロセスの修正により、組織の合理化を図り、長年にわたる規制上の問題を解決しようとしている。これとは別に、ドナルド・トランプが2期目の米大統領に選出されたことも、金融セクター全体に恩恵をもたらすと予想されている。投資家は、トランプ政権が規制緩和に重点を置くことで、バイデン政権と比較して銀行監督へのアプローチが緩やかになる可能性に賭けている。これにより、銀行は取引量や融資活動の増加を通じて収益を拡大すると見られているほか、コンプライアンスにかかるコストが低下することにより、収益性も高まる可能性がある。
トランプは減税にも賛成しており、これもシティグループのような銀行の収益に貢献する可能性がある。民主党と比較して、自由市場をより支持する共和党は、上院と下院の両院において政権を掌握した。全体として、選挙後の金利低下と政治的確実性の向上により投資銀行業務が活性化し、債券や株式の発行や、M&A関連の業務が増加する可能性がある。
私たちの考えでは、シティグループの現在の株価は公正に評価されている。米国時間12月10日現在の株価である約72ドルは、私たちの目標株価とほぼ一致している。
(forbes.com原文)