トランプの出生地主義廃止案、詳細は
2023年5月の動画でトランプは、米国内で生まれた子どもが米国籍を取得するには、両親の少なくとも一方が米国籍保有者か合法的な米国居住者でなければならないとする制度変更を提案した。NBCニュースは11月、この制度変更が遡及して適用される可能性は低いと報じた。つまり、すでに米国で出生した人は、親が不法移民であっても引き続き米国籍を保持できるということだ。だが、トランプは『ミート・ザ・プレス』で、たとえ米国籍保有者であっても国外追放する可能性があると示唆。不法滞在の人物のみを家族から引き離して強制送還するよりも、「家族を引き離さない唯一の方法は、家族全員を一緒にしておくことだ。そして、全員を送還しなければならない」と述べた。
出生地主義の廃止、影響はすべての米国人に
トランプは出生地主義の廃止を移民抑制策として推進し、不法移民による「出産旅行」や、合法的な移民手続きの「順番待ち回避」に子どもを利用するのを取り締まれると主張している。しかし、出生地主義を廃止すれば、米国籍を得るはずだった子どもたちが不法滞在者となるため、かえって米国内の不法移民の人数が増加する可能性が複数の研究で指摘されている。米シンクタンク移民政策研究所(MPI)の2010年9月の研究報告によると、両親とも不法滞在である場合に限って出生地主義を廃止したとしても、2050年までに1600万人の不法滞在者が新たに生まれ、不法移民数は出生地主義が維持された場合よりも44%増加する。また、この制度変更により、子どもを持つすべての米国人に、面倒な役所手続きという新たなハードルが課されることになる。
すなわち、子どもが生まれた場合、すべての親は、自身が米国籍保有者または合法的な米国居住者であることを証明し、わが子を米国市民として登録しなければならなくなるのだ。しかも、米国人はこれまでのように出生証明書を市民権保有の証しとして提出できなくなる可能性が高く、パスポート申請などの手続きが煩雑になりかねない。