経済・社会

2024.12.10 18:15

自爆した尹錫悦大統領 ハイブリッド戦争、他国の重要な教材に

Photo by Kim Jae-Hwan/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

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韓国検察当局は9日、尹錫悦大統領に対する出国を禁止した。3日夜の「非常戒厳」宣布を巡り、現職大統領としては史上初めての内乱罪適用の日が迫る。逆に言えば、自由主義社会の大統領としては極めて異例、異常な行動だったとも言える。尹大統領の3日夜の記者会見を聞いた松村五郎・元陸上自衛隊東北方面総監は「極右系ユーチューバーかと見間違えるような、過激な言葉のオンパレードだった」と語る。「国会は犯罪集団の巣窟だ」「国会が自由民主主義体制を崩壊させるモンスターになった」という尹氏の言葉遣いは、確かに一国の指導者としてふさわしいとは言えない。

尹氏をよく知る人々によれば、尹氏は検察官出身のため、正義感が強く、「白か黒か」という二分法を好む傾向にはあったが、特定の強い政治姿勢があったわけではない。実際、文在寅政権当時には、朴槿恵元大統領に対する捜査を評価され、検事総長に昇進している。2022年3月の大統領選に出馬したのも、文政権当時に懲戒処分を受けたことから、「反文在寅勢力のシンボル」に祭り上げられた結果に過ぎない。極右の指導者どころか、保守政治家として一目置かれていたわけではない。

その尹氏の異変の始まりは、昨年8月15日に行われた光復節(祖国解放記念日)の記念演説だった。この時、尹氏は「共産全体主義に無分別に従い、創作宣伝で世論を歪曲し、社会を混乱させる反国家勢力が、大手を振っている」と語り、初めて「反国家勢力」という言葉を使った。このころから、尹氏の心境に「極右傾向の芽」が生まれていたようだ。

尹氏は今回の非常戒厳の際、中央選挙管理委員会に兵士を送った。4月の総選挙で「不正行為」があったことを証明したかったからだという。韓国の複数の知人たちは「主に、極右系のユーチューバーやインフルエンサーが広めた言説だった」と語る。

尹氏は激しい政争に疲れていたようだ。進歩(革新)系最大野党「共に民主党」は閣僚や政府高官の弾劾を連発。政府提案の法律もことごとく阻止しようと動いた。進歩系メディアも、こうした野党の動きを比較的好意的に伝えた。尹氏はいつしか、自分に好意的なメディアしか目を通さなくなった。メディアだけではなく、極右系ユーチューブも好んで視聴していたという。

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文=牧野愛博

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