サイエンス

2024.12.12 16:00

「追いかける恋」の科学、恋愛を読み解くカギは「希少性」?

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4. 希少性を悪用した感情操作

恋愛関係においては、希少性の原則がひそかに武器として用いられるケースもある。意識的か無意識的かを問わず、愛情表現やコミュニケーションを控え、感情を出し惜しみするパートナーは、希少性を醸し出すことで、相手が自分に対して感じる価値を高めようとしているのかもしれない。こうした戦術をとると、相手が過度に依存し、手が届きそうで届かないつながりを常に求めようとする、いびつな関係に陥るおそれがある。

こうした関係の力学は、恋愛において「ワル」が醸し出す魅力にも通じるものがある。European Journal of Personalityに掲載された2016年の研究では、特に短期的な関係においては、衝動性や頑固さ、反抗心などの自己愛的な性格上の特徴が、人を引きつける魅力となることがわかっている。

これらの特徴は、予測不能で目新しい、という雰囲気を醸成するため、人を引きつける(感情をかき乱されるリスクがあっても、だ)。同様に、感情を隠すような行動によって生み出される希少性が、瞬発的な欲望を増幅することもある。しかし長期的にみると、こうした在り方は、相手との関係の健全性を損なう方向に働くことが多い。

感情面でのウェルビーイングを維持したいのなら、今挙げたような人間関係の力学を認識することが不可欠だ。恋愛関係は、お互いへの敬意やオープンなコミュニケーション、そして継続的な愛情表現によって育まれるものだ。「つれない人」という印象を与え、相手から一方的に愛情を注がれるように仕向ける、感情操作を狙った戦略が、本当の愛を育むことはない。

「豊かな関係」を養うには

希少性をベースにした姿勢から抜け出すには、関係の豊かさや安心感、お互いへの感謝の気持ちに基づく視点へと、意識を転換する必要がある。こうした「豊かさ」に根差した関係では、愛情はオープンに表現され、隠し立てなく何事も共有され、相手を安心させるような言葉がためらいなく発せられる。

意識の焦点を「希少性」から「豊かさ」へと移すことで、パートナーとの関係を、成長や支援、絶え間ない愛情を促す場として見られるようになるだろう。

希少性を演出して愛情を得ようとするのではなく、健全な恋愛関係は安定した、心を開いたつながりに基づくものであることを、改めて胸に刻もう。「豊かな関係」を目指すことは、安全に感じられる安定した愛を育む後押しになる。そうした関係では、双方が自分たちのつながりに自信を持ち、希少性がもたらす不安とは無縁の生活を送ることができるはずだ。

forbes.com 原文

翻訳=長谷 睦/ガリレオ

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