欧州

2024.12.10 09:30

ロシア軍にポクロウシク攻略の余力はあるか 檄飛ばすプーチンはシリアで面目丸潰れ

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ウクライナ東部の砲弾で穴ぼこだらけの戦場で、ロシアの大きな目標はドンバス地方を完全占領することにある。石炭埋蔵の豊富なこの地方は北のルハンシク州と南のドネツク州で構成され、ウクライナの国土のおよそ1割を占める。

2022年2月、ウクライナに対する全面戦争を起こしたロシアは、数カ月のうちにルハンシク州のほぼ全域を掌握した。一方、ドネツク州は、開戦から2年10カ月近くたつ現在も3分の2ほどしか制圧できていない。そして、ロシアが近いうちにドネツク州を全面占領できる見通しは暗くなりつつある。

主な障害はふたつある。ウクライナが保持する要塞都市のポクロウシクと、その北東40kmほどのコスチャンティニウカからスロビャンシクまでの数珠つなぎの要塞都市群だ。

ウクライナのシンクタンク、防衛戦略センター(CDS)は8日の作戦状況レポートで「敵は今年末までに、コスチャンティニウカからドルジュキウカ、クラマトルシク、スロビャンシクと連なる『要塞ベルト』の制圧にも成功しないだろうし、ドネツク州の(完全)占領にも成功しないだろう」と予想している。

だからといって、ロシア軍が前進していないというわけではない。ポクロウシク方面に展開しているロシア陸軍第90親衛戦車師団の部隊はここ数週間で、ジョウテ村を抜けてその先のノボプスティンカ町まで西進し、幅は狭いものの長さ数kmの突出部をつくり出した。その先端にいる前衛部隊はポクロウシクの南8kmほどの地点に達している。
ロシア軍がポクロウシクを直接攻撃するのでなく、側面に回り込んで遮断することを狙っているのであれば、突出部を形成したこの前進は重要だ。実際、ロシア軍がそれを狙っている証拠は十分ある。第90戦車師団や近傍のロシア軍部隊が次に試みる行動は、突出部先端の左側にあるノボトロイツィケ村とその南のウクラインカ村を制圧し、突出部を膨らませることだと考えるのが妥当だ。

この突出部を広げられれば、ロシア側はポクロウシクを圧迫できるのに加え、突出部の根元あたりから南に下ったゾリャ村やソンツィウカ村方面のウクライナ軍の補給線を脅かせるという、副次的な効果も見込める。そのさらに南方では、ロシア軍が10月1日、ウクライナ側の要衝だったブフレダルから、疲弊した守備隊のウクライナ陸軍第72独立機械化旅団を押し出して以降、ゆっくりだが着実に前進している。

突出部の拡大は、ロシア軍がポクロウシクを南側から包囲していくのと同時に、クラホベ市やその周辺を北側から包囲していくことにもつながるかもしれない。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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