2022年2月、ウクライナに対する全面戦争を起こしたロシアは、数カ月のうちにルハンシク州のほぼ全域を掌握した。一方、ドネツク州は、開戦から2年10カ月近くたつ現在も3分の2ほどしか制圧できていない。そして、ロシアが近いうちにドネツク州を全面占領できる見通しは暗くなりつつある。
主な障害はふたつある。ウクライナが保持する要塞都市のポクロウシクと、その北東40kmほどのコスチャンティニウカからスロビャンシクまでの数珠つなぎの要塞都市群だ。
ウクライナのシンクタンク、防衛戦略センター(CDS)は8日の作戦状況レポートで「敵は今年末までに、コスチャンティニウカからドルジュキウカ、クラマトルシク、スロビャンシクと連なる『要塞ベルト』の制圧にも成功しないだろうし、ドネツク州の(完全)占領にも成功しないだろう」と予想している。
だからといって、ロシア軍が前進していないというわけではない。ポクロウシク方面に展開しているロシア陸軍第90親衛戦車師団の部隊はここ数週間で、ジョウテ村を抜けてその先のノボプスティンカ町まで西進し、幅は狭いものの長さ数kmの突出部をつくり出した。その先端にいる前衛部隊はポクロウシクの南8kmほどの地点に達している。
Daily Ukraine map thread for Fri/Sat 6-7th December 2024
— Ukraine Control Map (@UAControlMap) December 7, 2024
Highlights: Ukrainian forces withdraw from the Katerynivka pocket as Russian forces attack the flanks. It's very likely Ukraine have withdrawn further using the river as a barrier so our grey zone is quite large here… pic.twitter.com/EteikpRxl6
この突出部を広げられれば、ロシア側はポクロウシクを圧迫できるのに加え、突出部の根元あたりから南に下ったゾリャ村やソンツィウカ村方面のウクライナ軍の補給線を脅かせるという、副次的な効果も見込める。そのさらに南方では、ロシア軍が10月1日、ウクライナ側の要衝だったブフレダルから、疲弊した守備隊のウクライナ陸軍第72独立機械化旅団を押し出して以降、ゆっくりだが着実に前進している。
突出部の拡大は、ロシア軍がポクロウシクを南側から包囲していくのと同時に、クラホベ市やその周辺を北側から包囲していくことにもつながるかもしれない。