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2024.12.24 16:00

成長やまない督促・回収DXのLecto カギは「家族最優先」と「口出しをしない」こと

督促・回収DXのLectoが事業を急拡大するにあたり、人材確保に動いている。メガバンク系のベンチャーキャピタルも注目する同社の戦略やカルチャーについて、代表取締役社長の小山裕に話を聞いた。

2021年創業のスタートアップが、シリーズAラウンドで累計13億円超となる調達をした。リードしたのはSMBCベンチャーキャピタルで、三菱UFJイノベーション・パートナーズやみずほキャピタルなどの金融機関も参加した。

メガバンク系のベンチャーキャピタルも一目置くそのスタートアップはLecto(レクト)。注目の理由は、同社が提供する「Lectoプラットフォーム」にある。

「回収は人の手で……」アナログな現場を刷新

Lectoプラットフォームは、債権管理や督促・回収のDXを推進するSaaSだ。同社代表取締役社長の小山裕(以下、小山)によると、督促・回収の業務はこれまでアナログで行われてきた。

「督促・回収の発想が生まれて以来、人が電話をしたり手紙を送ったりといった地道な作業が何十年も変わっていません。与信審査にAIが導入されるなど、入り口はデジタル化が進んでいるのに、出口である回収側はアナログのままという非対称性をなんとか変えたいと考えていました」

自身の決済ビジネスでの経験を生かし、金融サービスのエコシステムの空白の部分を埋めようと小山がローンチしたのが、Lectoプラットフォームなのだ。プラットフォーム上で債務者を一元管理し、未払い額など債務状況に合わせてショートメール(SMS)などの手段で督促する。SMSなどを送る時間帯や頻度もセグメントに合わせて設定し、自動的に督促することができる。同プラットフォームは、金融デジタル化の時代にもマッチした。

「10年ほど前から始まった金融規制緩和と金融のデジタル化、APIの普及に加え、キャッシュレス政策が進み、消費者の決済行動が変わった。発生する債権の回数と単位がものすごく細分化されたことが大きな変化です。QRコード決済で1,000円程度の商品を後払いで買うことも普通になったので、例えば1,000円の債権が200万件発生し、その10%に支払いの遅れがあったら、未回収件数は20万件になります。その件数を人で回収するのは、現実的ではない。デジタルを活用して自動化していかないと、対応できないのです」

Lectoプラットフォームは、イオングループやブリヂストンなどさまざまな企業が導入。近年、増えているサブスクリプションサービスは未払いが発生しやすく、こうした金融を取り入れたサービスの多様化もあり、あらゆる産業がターゲットとなる。小山によると、同プラットフォームを導入したユーザーは、督促する件数が平均3倍に増えるなかで、回収率が30%向上した事例もあるという。さらに、このプラットフォームは債権者側だけでなく、債務者側のペインも解決すると小山は言う。

「支払いに遅れる人の9割が、コンビニ伝票の紛失や口座への入金忘れなどのうっかりミスによるものだともいわれています。そういう人たちにはわざわざ電話をするよりも、SMSでリマインドしたほうが効果的です。支払い用のバーコードも送れるので、そのままオンラインで支払いすることも可能です」
同社代表取締役社長の小山裕。

同社代表取締役社長の小山裕。

急成長を支える「家族最優先」の企業風土

さまざまな業界に導入が広がるLectoプラットフォームだが、今回の資金調達には、金融業界の開拓をさらに強化する狙いがある。LectoはSMBCコンシューマーファイナンスと提携、同社がLectoプラットフォームを導入することが決定した。ほかの大手金融機関にも導入する予定であり、それらの金融機関のネットワークを活用し、地方銀行にも拡大する計画だ。そして、小山が次に狙いを定めるのは通信やインフラだ。

「例えばある電力会社では、毎月数十万の口座で未入金が発生し、その回収を外部の業者に丸投げしているそうです。そのコストが膨らんでいるので、自分たちでなんとかしようという動きになっています。かといってそれほど多くの人員は割けないので、当社のプラットフォーム導入に向けて、概念実証(PoC)を計画しているのです」

次々と大型案件が進むLectoにとって課題は、営業人材の不足だ。資金調達の目的のひとつには、そうした人材の確保もある。

「今は社員が30人ほどですが、向こう1年で倍にする計画です。営業だけで15人増やすことを考えており、募集は急務です。エンタープライズに向き合ったことのある知見、経験、肌感覚のある方に来ていただきたいと考えています」

つまり、大手企業相手の営業経験が求められるということだ。急成長するLectoでは、それに合わせて個人も成長できると小山は強調する。

「来年はさらに多様な企業との提携を予定しており、今は、大型案件を自分主導で進められるタイミングです。Lectoが世の中に広がり、社会にどんどん浸透していく右肩上がりの状態を体験できるし、自分が成長していくことも実感できるでしょう」

自分で自由に発想して行動できることも、Lectoで働く魅力のひとつだ。

「当社の組織には上下関係がなく、マネジャーもいません。全員がフラットであり、一人ひとりのやりたいことをかなりの確率で実現できます。チームとして成果を出すことを推奨するカルチャーがあるので、仲間さえ巻き込めたら、私の決裁は必要ありません。全員がそういう気持ちで入社しているので、議論はすごく活発ですし、心理的安全性も高いです」

創業時から小山は、現場に対して極力、口出しをしない。戦略の方向性は示すが、製品・サービスづくりも、社員が主体になって考える。小山が社員に対して強くこだわるのは、「家族最優先」の意思決定だ。

「パートナーや子どもが病気になったとき、それに対処することに勝る仕事は世の中に存在しないと思っています。当社では緊急事態が起きたとき、自然発生的にチームのメンバーが支えてくれるので、仕事を安心してほかの人に任せて、家族に向き合うことができます。人が人らしく生きられる世の中を実現するためには、まずは社内がそうでなければなりません」

同社では、それを実行できる体制も整っている。

「入社初日から20日間の有給に加え、ヘルスケア休暇を10日間付与しています。普通の会社では、有給は風邪をひいたときや家族の面倒を見るためなどに使いますが、有給とは本来、旅行など自分のために使うべきだと思うので、有給とは別にヘルスケア休暇を付与しています。制度面とチームで支え合う文化によって、家族最優先の意思決定をしやすくしているのです」

人員を増やすことで、海外展開や新規株式公開(IPO)にも意欲を燃やす小山。同社が目指すのは、煩わしい督促・回収業務からの解放だ。

「Lectoが浸透していくことによって、督促・回収のような面倒くさいイメージのある業務をデジタルに代替し、空いたリソースを活用してほしいのです。クリエイティブな仕事に専念できますし、趣味の時間に充てられるようにもなる。デジタル化すればするほど無味乾燥な世の中になると思われがちですが、私は逆だと思っています。Lectoのようなツールがあることによって、すべての人が人らしく生きられる世の中になっていく。究極的にLectoの存在意義は、それを実現させることだと考えています」

Lecto
https://lecto.co.jp

こやま・ゆたか◎東京都出身。20代で起業を経験。その後、三越伊勢丹グループでクレジットカード事業に携わった後、再度の起業とKDDIグループジョインを経て、2017年にGardiaを設立。21年にLectoを設立し、代表取締役に就任。

Promoted by Lecto | text by Fumihiko Ohashi | photographs by Shuji Goto | hair & make by Masaki Yoshinaka | edited by Akio Takashiro