海外投資家はなぜ「日本の歴史的建造物に注目」するのか
では、海外投資家たちは、山奥にあるこのお寺のどこに価値を見出したのだろうか。既述した利回りの高さだけではなく、そのほかに、出資者のインタビューから見えてきた理由は、出資すれば自分たちも運営に携われることや日本に関わり拠点ができることなど、以下の3つが挙がった。
一つ目は、世界中の文化遺産を守っていきたいという理由。たとえば、両親がパレスチナ出身で自身はアメリカで生まれ育った24歳の女性アビーは、戦争によって、自国の大切な文化遺産が壊れていくことに耐えられなかったとのこと。「自国の文化遺産を守ることはもうできないけれど、老朽化や後継者がいないことが理由で朽ちていく文化財があるのであれば、それは守っていかないといけないし、自分も当事者として関わりたい」と思い、今回の出資を決めたという。
二つ目は、日本文化が好きという理由。アメリカ人の59歳の男性フランクは、コロナ禍で渡航ができなかった2年間を除き、2018年から2024年まで合計4回、日本を訪れている日本愛好家。特に文化や自然、清潔さ、安全性、食事が気に入っている。そんな彼が今回投資を決めたのには、寺の保全を通して、日本文化を守ることに共感したから。フランクは「西洋は、西洋化させるなど、他の文化を上書きしがちだが、そのような形は古い。もっと人々が連携して、良いものを残して行かなければいけない」と話す。
三つ目は、日本と離れて暮らしている日本人が日本との接点を求めている理由。イギリス在住の50代の日本人女性は、日本に一時帰国した際の滞在先となる拠点を探していた。今回の楞厳寺は、歴史的な建造物である点も魅力だったが、それだけではなく、株主になると楞厳寺に宿泊できるだけではなく、交流イベントに参加することができる点に惹かれたという。
「寺体験」、朝6時からのお勤めに参加も
では、どのような「交流」が海外の方々には魅力的に映っているのだろうか。反響が高かったのは、朝の座禅などのお寺体験や無農薬野菜や鹿や猪などの地元ならではの食事だ。
お寺体験では、近年外国人に人気のコンテンツの一つになっている坐禅だけではなく、朝6時からのお勤め(お参り)に参加することも可能。また、この地域唯一の住職が提供してくれるお粥の朝ごはんも人気だという。そのほか、出資者が楽しみにしているのは色川地区の食材を使った夕飯だ。ただ食すだけではなく、地元の農場を訪れ、無農薬野菜の収穫をし、のびのびと育った鶏の平飼い卵を採取することもできる。
色川地区は、棚田でお米を育てているだけあって、豊富な水と肥沃な大地が残っている場所。300人の居住者のうち、56%以上が都心からの移住者だが、移住理由は無農薬野菜の栽培で有名だから。そうした背景も海外の人たちが惹かれているのだそう。



