これらの川は軍用の重車両にとって天然の障害物となっており、そこに架けられる橋もすでに多数が攻撃目標にされ、破壊されている。したがって今後の戦局の推移は、両軍がどれほど効果的に架橋作戦を遂行できるかにある程度かかっている。
川への架橋は、作戦行動としては最も複雑な部類に入ると考えられている。工兵部隊は、概して最小限の支持体で、重装甲車を支えられ、かつ強い流れにも耐えられる橋を、すばやく設けなくてはならない。
戦術面では、この作戦行動は正確な調整と迅速な遂行が求められる。部隊はまず、橋頭堡を築くために対岸を確保する必要がある。確保できれば、工兵部隊が多くの場合、敵の火力にさらされながら橋を組み立てる。その後、強襲部隊が橋を突っ切り、対岸を完全に確保する。
ただ、現代ではドローン(無人機)によってその橋を精密攻撃したり、電子戦機材によって調整に不可欠な通信ネットワークを混乱させたりできるようになっている。そのため、架橋作戦はますます難しいものになっている。
北東部や南部で渡河うかがうロシア軍
ロシア軍の作戦のテンポが速まるのにともない、川や橋に重点を置いた活動が目立ってきている。ロシア軍は北東部ハルキウ州のマシュチウカ─ザパドネ方面のオスキル川に、中隊規模の橋頭堡を築いたと伝えられる。オスキル川は、同方面の南方にある都市クプヤンシクがロシア側に奪われるのを阻む重要な障害物と見なされてきた。これまでのところ、クプヤンシク方面のオスキル川で強襲に必要な車両を支えられるような橋が渡されたという報告はない。ロシア軍部隊は渡河を試みればウクライナ軍の大砲の射程内に入り、架橋を試みればウクライナ軍のドローンに探知されるので、橋を渡すのは難しい任務になるだろう。