ヘルスケア

2024.12.08 09:00

コンゴ民主共和国で発生する謎の疾患、WHOが調査中

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世界各地の研究者が、コンゴ民主共和国(DRC)で多数の死者を出している不可解な疾患について懸念を表明している。この疾患は、アフリカ疾病対策予防センター(アフリカCDC)が暫定的に「疾病X(Disease X)」と呼んでいるもので、DRC南西部の遠隔地であるクワンゴ州に限局しているようだ。ただし、より広範な地域への拡大は否定できない。

現時点で、正確な感染拡大規模は明らかになっていない。ある報告によれば79名が死亡したとされる一方、ロイター通信は143名が死亡したと伝えている。最初の感染例は10月下旬に発生したとみられるが、それ以降の発症時期については明確な情報が出ていない。

複数の報道によると、この疾患にかかった人々は頭痛、発熱、呼吸困難といったインフルエンザ様症状を示している。このような症状の組み合わせは呼吸器系ウイルス感染症と合致するが、原因病原体は特定されていない。現在、世界保健機関(WHO)の専門家チームがDRCへ派遣され、原因解明にあたっている。患者から採取された検体は分析中であり、近い将来、その結果が判明する見込みだ。基本的な検査によって、この疾病Xがウイルス性なのか、そしてもしそうであればどのウイルスが原因なのかを突き止める手がかりが得られる可能性がある。

詳細なデータが揃うまで、この不可解な流行に関して推測するのは難しい。既存のウイルス、たとえばインフルエンザやSARS-CoV-2(新型コロナウイルス)の変異株である可能性もあれば、新規に出現したウイルスが原因である可能性もある。さらには、感染症以外の要因による疾患である可能性も排除できない。

この病がより広範な脅威となるかどうかも不透明だ。高い病原性を持つ呼吸器ウイルスが世界的な影響を及ぼし得ることは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で私たちはすでに身をもって経験している。ただし、現時点では情報不足であり、安易な推測は避けるべきだ。

DRCでは、他の感染症流行とも引き続き闘っている。2024年8月、WHO事務局長は、この地域におけるmpox(エムポックス。旧称はmonkeypox、サル痘で、サル由来のウイルス感染症)流行について国際的に懸念すべき公衆衛生上の緊急事態であると宣言した。CDC(米国疾病対策予防センター)の報告によれば、2024年1月1日以降、同国でmpoxは4万7000件を超える感染例と1000件の死亡を記録している。2018年にはエボラ出血熱で2287人が死亡しており、さらにUNAIDS(国際連合エイズ合同計画)のデータによると、DRC国内には50万人以上のHIV感染者が存在するとされている。

今後、疾病Xの原因や重症度、治療法や予防策について、より多くの情報が明らかになる見込みだ。それまでは、医療従事者、研究者、そして公衆衛生当局が警戒態勢を続ける。

forbes.com 原文

翻訳=酒匂寛

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