その後トランプは不動産に没頭した。2012年半ばから2016年半ばにかけて、現金の約8割にあたる6億ドル(約900億円)を買収と不動産開発に注いだ。マイアミのゴルフリゾートを再開発し、欧州で2つのゴルフリゾートを購入。また、ワシントンD.C.のオールド・ポスト・オフィスをトランプ・インターナショナル・ホテルに変えた。その上、大統領選の活動に約6500万ドル(約97億円)を費やした。
政治活動は不動産帝国を構築するより安上がりとなった。大統領時代、トランプの不動産開発費は年間1億ドル(約150億円)以上減った。だが、政治には別のコストが必要だった。2016年に大統領選で勝利した直後、トランプが設立した不動産投資講座「トランプ大学」の詐欺疑惑をめぐる訴訟で、トランプは2500万ドルを原告らに支払うことで和解した。これはトランプにとって打撃となり、大統領就任時に密かに借入れすることになった。
記録によると、トランプの2018年6月30日までの1年間の支出額は少なくとも2012年以降最も少ない8300万ドル(約124億円)になり、次の1年間はさらに約3割減って約6000万ドルになった。結局、ワシントンD.C.のホテルも欧州のゴルフコースも黒字化に苦戦し、支出の大半はさまざまな事業を支えるのに使われた。2020年に新型コロナが米国でも広がると、損失は倍増した。「ホテルを閉鎖したり会社を清算したりするとなれば、事業がうまくいっているとは言えないだろう」とトランプはホワイトハウスの会見室で大勢の記者たちに語った。