Krollでビジネスリスク・マネジメントを担当するマシュー・ダンパートは、「近年は、さまざまな業界で脅威が増加しているが、特にヘルスケア企業の幹部に対する脅威は急増している」と指摘する。
「医療とヘルスケア業界は、ビジネスの性質上、このような脅威に最もさらされやすい分野の1つだ。なぜならこれらの業界の人々は、絶望の中に居る人たちやその家族と接するからだ」とダンパートは述べている。
Krollは、投資家や法律事務所などのさまざまな顧客にセキュリティサービスを提供しているが、トンプソンの殺害事件以降、同社のもとにはセキュリティの強化についての問い合わせが殺到したという。
「この事件以降、すべての業界のクライアントが、どのようにして自分たちの会社の幹部や社員らを守るべきかを尋ねてくるようになった」と、ダンパーは語る。彼はまた、「大手企業の幹部や富裕層の人々にとっては、潜在的な脅威を察知するためのインテリジェンスの仕組みを持つことが非常に重要だ」と指摘した。
トンプソンCEOは、マンハッタンのヒルトンホテルの外で射殺された際、セキュリティ要員を伴っていなかったとされている。同CEOの妻は、彼が以前に脅しを受けたことがあるとNBCニュースに語ったが、詳細には触れなかった。
マーク・ザッカーバーグやジェフ・ベゾスのようなハイテク大手のCEOは、多くの場合、セキュリティチームを雇っており、企業は彼らを守るために莫大な費用を費やしている。米証券取引委員会(SEC)の記録によるとメタは、ザッカーバーグの個人セキュリティに毎年2000万ドル(約30億円)以上を支出している。また、グーグルの親会社のアルファベットは、2023年にスンダー・ピチャイCEOに680万ドル(約10億2100万円)のセキュリティ予算を割り当て、アップルもティム・クックCEOの警備に82万ドル(約1億2300万円)を支出していた。
トンプソンCEOが射殺された現場から見つかった弾丸の薬きょうには、「deny(否認)」「defend(防御)」「depose(追放する)」という言葉が刻まれていたとされる。この3つの単語は、保険会社が保険金の支払いを回避するために用いる戦略を示唆しているとの見方が有力だが、最近のデータによると、ユナイテッドヘルスケアは全米で最も高い保険金の支払いの拒否率を記録していた。
(forbes.com 原文)