AI

2024.12.28 11:00

世界で唯一の「給料を貰って働く」人型ロボ? 米Agility Roboticsの野望

2024年11月13日、ポルトガルのリスボンで開催されたWeb Summitに登場したAgility Roboticsの二足歩行ロボットDigit(Photo by Horacio Villalobos#Corbis/Getty Images)

2024年11月13日、ポルトガルのリスボンで開催されたWeb Summitに登場したAgility Roboticsの二足歩行ロボットDigit(Photo by Horacio Villalobos#Corbis/Getty Images)

世界のハイテク業界ではさまざまな企業が、人間の仕事を置き換える自律型ヒューマノイドロボットの開発を進めているが、実際に仕事を持っているロボットは数少ない。「本物の、9時から5時までの給料を貰える仕事をこなしているのは、当社のロボットだけです」と、Digitと呼ばれるロボットを提供中のAgility Robotics(アジリティ・ロボティクス)CEOのペギー・ジョンソンは述べている。

「この分野には多くの誇大宣伝がありますが、私たちのロボットは、着実に進化していて、実際に仕事をしている唯一のヒューマノイドです」と彼女は先日、ポルトガルのリスボンで開催されたWeb Summitで語った。

この分野では、ボストンダイナミクスのような老舗やテスラのような大手に加えて、Figure(フィギュア)、Sanctuary(サンクチュアリ)、1X(ワンエックス)などのスタートアップが注目を集めている。しかし、アジリティのジョンソンは、同社がこの市場のリーダになると述べており、先日はドイツ自動車部品大手のSchaeffler AG(シェフラー)からの出資と提携を発表した。

「当社は、アジリティの技術を自社の業務に統合し、2030年までに100カ所の工場を有するグローバルネットワークで大規模にヒューマノイドを展開できる可能性を見込んでいます」とシェフラーCOOのアンドレアス・シックはプレスリリースで述べた。年間売上高が150億ドル(約2兆3700億円)規模のシェフラーは、約12万人の従業員を抱える大手企業であり、主に自動車産業向けに数百種類の部品を製造している。そのため、両社の提携はアジリティに大きな追い風を与えることになる。

オレゴン州オールバニに本社と製造施設を置くアジリティは、同社は次世代のDigitモデルを同地で製造しており、近い将来、このロボットが自分自身を作る手助けをすることになるとジョンソンは述べている。同社のロボットは、最初は物流の分野で活躍するが、最終的にはロボット自身がロボットの製造プロセスに関与することになるという。

現状のDigitは、通常の8時間勤務を行い、人の助けなしで自分で充電を行なうが、作業と充電の比率は約4:1(4分の作業に対して1分の充電)であり、それほど良いものではない。しかし、次世代のDigitは、新しいバッテリー技術によって、その比率が10:1に向上する予定だとされている。

「指を持たない」ことの利点

Digitが実際の仕事をこなせる理由の1つは、アジリティのシンプルで実用的なロボティクスのアプローチにある。ロボットの複雑さの半分は手と指にあるが、Digitには指がない。

「実際、5本の指は必要ありません。指は非常に壊れやすいのです」とジョンソンは説明する。その代わりに、Digitは物の隙間に入れて必要なものをつかむことができる特製のグリッパーを備えており、次世代のモデルには「交換可能なエンドエフェクター」が搭載される予定だ。これはDigitが「手」を外して、次の仕事に必要なツールや付属物、またはマニピュレーターに交換できることを意味する。

さらに、OpenAIのChatGPTを含む複数の生成AIモデルが搭載される予定で、Digitはすでに、ゴミとリサイクル品を仕分けする仕事をこなせるという。「私たちは、さまざまな用途に応じて異なるロボットを開発しています。そうやって、人間の仕事を置き換えていくのです」とジョンソンは語った。
SEE
ALSO

テクノロジー > AI

人型ロボットの米Figureが初の商用版を発表、「棺桶サイズ」の箱で発送

forbes.com 原文

編集=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事