スイスの投資会社Founderful(ファウンダーフル)は11月14日、同国に本拠を置くテック系スタートアップへの投資に特化したファンドを組成し、当初の目標額を超える1億4000万ドル(約217億円)を調達したことを明らかにした。
欧州のベンチャーキャピタル(VC)が資金調達に苦労していることを考えると、ファウンダーフルによる資金調達のニュースは、スタートアップ分野でのスイスの勢いを一層印象付ける。クランチベースによると、2024年の第3四半期にVCがスタートアップに出資できると考えている金額の合計は100億ドル(約1兆5400億円)に減少し、2020年の同時期以来で最低の水準となった。
欧州の政策立案者たちは、この状況を憂慮している。最近、マリオ・ドラギ欧州中央銀行(ECB)前総裁は、EUの競争力強化に向けた報告書を発表した。その中で、彼はアーリーステージのスタートアップへの支援において、欧州と米国や中国との格差が拡大していると警告した。2013年から2023年の間のVCによる調達額を比較すると、米国が9240億ドル(約142兆円)であったのに対し、欧州は1300億ドル(約19兆9900億円)に過ぎなかった。
そんな中、ファウンダーフルが組成した1億4000万ドル(約217億円)のファンドは、同国のスタートアップに対する投資家の熱意を反映していると同社のパートナーであるアレックス・シュトックルは指摘する。「多くの人は、新しいイノベーションの大きな波がスイスから生まれると感じている」と彼は言う。
スイスにとって有利な要因の1つは、ハイテク産業が成熟度を増していることだ。例えば、Eコマースのように市場規模が大きいB2C領域では、既に大きなシェアを持つ老舗企業が存在するため、新世代のテック企業は、産業オートメーションや材料科学、ヘルスケアなどのディープテック分野に注力している。これらの企業は、Eコマースのように人口の多い主力市場に拠点を構える必要はない。