いざ障がいを持つスタッフを組織に招くと、改めて人とは多様であることに気付かされといいます。その後、LGBTQ+に関する社内体制の整備や、兼業副業人材の活用など多様な人材を活かすダイバーシティ経営へと発展しています。現在従業員のうち障がい者は4名、LGBTフレンドリー企業の認定も受けています。
「多様な存在がスタッフ1人ひとりの"個の創造性"を高める」という早川寛明社長の考えがそのベース。これらの変革を通じ、下請け100%から、⾃社の技術を活かし、金属加工の端材を活用した真鍮小物やアクセサリーの製作販売など、新たな展開に繋がっています。こうした取り組みから大企業から協業の問い合わせがあったり、企業の生産性や従業員満足度の向上にもつながっています。
多様性の、事業収益への影響を調査したデータが非常に示唆的です。2018年にヨーロッパを中心に8カ国1700社の企業を対象に行われたBoston Consulting Group(BCG)の調査レポートによると、ダイバーシティがある企業ほど新商品や新規事業を生み出す割合が高く、売上に直結するというデータも報告されています。
多様性の高いリーダーシップチームを持つ企業は、そうでない企業と比べてイノベーション収益が19%高いことが分かっています。さらに、これらの企業は利益率も9%向上しており、多様な視点が企業の競争力を強化し、成長を加速させるのです。さらに、多様性がある企業では、従業員の85%が職場で「所属感」を感じると回答しています。これは、リーダーシップに多様性がない企業では53%に留まるという結果と比べて非常に高い割合です。
なぜ、ダイバーシティーはイノベーションを生み出すのか?
多様性が新たなビジネス創出に繋がり、売上向上に効く理由を理解するためには、イノベーションとはそもそもなにか、を確認する必要があります。経済学者シュンペーターは、イノベーションとは「新結合(ニューコンビネーション)」によって生まれると定義しました。つまり、ゼロから新たに生まれるわけではなく、一見関係ないもの同士、既存の要素が新しい形で結びつくことによって新たな価値が創出されることこそが、イノベーションなのです。
この理論は、異なるバックグラウンドを持つ人々が集まり、多様な視点が結びつくことでイノベーションが促進されるダイバーシティの概念に通じます。
例えば、回転寿司がその典型的な例です。今から約70年前、大阪の立ち食い寿司店の店主が、ビール工場を訪れ、ベルトコンベアで運ばれるビール瓶を見たことに着眼。いわば「ベルトコンベア×寿司」の掛け算から生まれたのが、回転すしです。1958年東大阪市布施駅前に生まれた「元禄寿司」が回転寿司というイノベーションの始まりなのです。
アシックスのバスケットシューズは、鬼塚喜八郎が旅館の食事で出たタコの酢の物を見て、吸盤にヒントを得て、吸盤状のソールにしたところ大ヒット商品になりました。また、新潟の金属メーカーでは、左利きのスタッフとの対話から、左右どちらの手ですくっても快適に使用できる「おたま」を開発し、スマッシュヒットを生み出しています。