次世代へと受け継ぐ真のラグジュアリー
今年同校に入学したのは、16名のみである。技術や知識だけでなく、人柄やモチベーションでも選抜されるという。今年入学したイタリア人の青年は、両親がテーラリングの職に就いており、その姿に憧れて入学を決意したそうだ。同校の開校記念式典に出席したブリオーニのメディ・ベナバジCEOは、彼ら新入生全員の入学金85%を負担する奨学金を用意。併せて1年目の中間試験と2年目の最終試験に合格すれば、残りの15%も返還することを発表した。そして同校の再開は、ブリオーニのマニュフェスト「スローラグジュアリー」の精神に基づくものであると力説したのである。ブリオーニが掲げる「スローラグジュアリー」は、“真のラグジュアリーとは持続するものである”という思想に基づいている。それは最高峰の天然素材を中心に用いることで環境に配慮したものづくりや、流行とは無縁のタイムレスなデザインの推進だけではない。師から弟子へ、そして親から子へ、アブルッツォの地にてゆっくりと、たが確実に受け継がれてきたテーラリングの文化。その火を絶やすことなく次世代へと受け渡し、未来永劫に輝かせることもまた、スローラグジュアリーの重要な使命なのである。そしてそのために必要なのは、テーラリングに情熱を注ぎ、7000ものステッチを根気よく施すことで着用者の体と一体となる世界最高峰のスーツを生み出す、未来のマスターテーラーを育てることに他ならないのである。
SNSなどの影響により、世界的な流行のサイクルがますます早まっている現在。ファッションはあっという間に消費され、忘れ去られる存在となってしまった。1日にしてトレンドとなり、数日で消え去るモノすらもあるほどだ。そんな目眩を覚えるほどスピーディで慌ただしい時代にあって、ペンネの学校を通して人材から服づくりを行うブリオーニの姿勢は、誠実で真摯に映るだけでなく、ひと際優雅でエレガントな異彩を放っている。そして手間や時間を一切惜しまず、直向きにクオリティと美学が追求された美しい服は、忙しない日々を忘れさせ、時を超えて持ち主を魅了し続けるのである。