原田:ガバナンス、サプライヤーとの協働、脱炭素を推進するために企業がCO2排出量に価格を付けて投資判断などに活用する「インターナルカーボンプライシング」の3つが鍵になると考えている。
1点目のガバナンスに関しては、取締役会に気候変動対応に精通したメンバーがいるか、取締役の任命要件に気候変動対策が含まれているか、取締役に対して環境への理解を推進・維持するための社内メカニズムを構築しているかどうかが重要なポイントになる。
2点目のサプライヤーとの協働についてだが、直近のデータでは、23年に気候変動に関してサプライヤーと協働している企業の割合は4割程度にとどまっている。残り6割の企業がサプライヤーに働きかけ、ともにサステナブル調達に向けて取り組むことが必要だ。
サプライヤーに変化を促す具体策としては、環境への対応に関する一定の要件を満たしたサプライヤーに財務的なインセンティブを提供することが考えられる。金融機関を巻き込んだ形でのスキームも出てきている。気候変動に関するトレーニングの提供や購買契約プロセスで情報開示や削減目標の設定を求めていくことも重要だ。サプライチェーンが広範囲におよぶ企業については、インパクトの大きいセクターや企業から優先的に働きかけるべきだ。
3点目のインターナルカーボンプライシングに関しては、サプライヤーのGHG排出量を財務的な影響として可視化し、脱炭素につながる設備投資の促進などの効果をモニタリングすることで、意思決定につなげることが大切だ。
──日本企業がアジア地域でサステナブル調達をリードするには何が必要か。
原田:地域固有の課題は、例えば東南アジアの森林減少や生態系への影響、水問題など、自然関連のものが多い。これらの課題を抱える地域から調達する企業はトレーサビリティを確立しなければならない。個社の取り組みに加えて、マルチステークホルダーとの協働の輪が広がることを期待する。
Scope3排出量削減の3つのポイント
1. 気候変動対応に責任をもつ取締役会2. サプライヤーとの協働
3. インターナルカーボンプライシング(社内炭素価格)の導入
原田卓哉◎2020年7月にCDPに入職。22年より環境省の再エネ電力メニュー審査等委員会の委員、23年より経済産業省のカーボンクレジット検討会の委員を務める。CDPサプライチェーンの業務にも参画し、サプライチェーンを通じた情報開示や取り組みを促進。