ワシントンD.C.のブライアン・シュワルブ検事総長は、高等裁判所に提起した訴訟で、アマゾンが2022年6月に、ワシントンD.C.の2つの地区で自社の配送サービスの使用を停止する決定を、秘密裏に行ったと主張した。アマゾンは、この決定により、これらの地区の配送スピードが著しく遅くなることを認識していたという。
アマゾンは、これらの地区の年間139ドル(約2万1000円)の費用を支払うプライム会員たちを騙し、配送が遅くなることを事前に知らせることを怠ったと、シュワルブ検事総長は主張している。
アマゾンは、これらの地区では自社の配送サービスを用いず、UPSや米国郵政公社(USPS)などの外部のオペレーターに委託したという。その結果、プライム会員の配送物が2日以内に届けられる割合は、除外前は72%以上だったものが、約25%に低下したと訴状には記載されている。
シュワルブ検事総長は、アマゾンのこの不正な慣行を禁止するよう裁判所に求めており、さらに損害賠償や他の罰則を求めている。
アマゾンの広報担当者のケリー・ナンテルは、検事総長の主張が「完全に事実無根だ」と否定しつつ、問題の地区では、配送ドライバーが狙われたことがあったという理由で、配送ルートや時間を含むオペレーションの調整が必要だったと説明した。
訴状によると、アマゾンのこの慣行の影響を受けたプライム会員の数は4万8000人に及ぶという。
アマゾンは、過去10年にわたり、低所得地域に他の地域よりも遅い配送サービスを提供していると批判されてきた。ブルームバーグは、ボストンやアトランタ、シカゴなどの低所得層や黒人住民が多い地域におけるプライム会員向けの配送が遅いと2016年に報じていた。その当時、アマゾンは「従業員の安全を最優先にしている」と述べる一方で、配送の遅延に関する主張には具体的に回答しなかった。
アマゾンのプライムサービスは、他の批判にも直面している。連邦取引委員会(FTC)は昨年6月、アマゾンが顧客の同意なしにプライム会員に登録させていたとしてアマゾンを提訴した。この件でアマゾンはFTCの主張が「虚偽」だとし、会員登録や解約が「明確で簡単」だったと反論している。この裁判は来年6月に開かれる予定だ。
(forbes.com原文)