SNSなどで公開された映像からは、北朝鮮兵士は10代後半あるいは20代前半のようにも見える。また、韓国の情報機関・国家情報院は、派遣された北朝鮮兵士は、北朝鮮特殊作戦軍を構成する「暴風軍団」と呼ばれる第11軍団だとした。韓国国防白書によれば北朝鮮軍の兵力は128万人だが、40~60万人程度は農作業や建設支援などに駆り出される「労働兵」とされる。ロシアに派遣された北朝鮮兵士は、労働兵ではなく、軍事訓練も受けている戦闘能力を持った部隊だという。
では、死地に赴くも同然の状態に置かれた北朝鮮兵士は、具体的にどのような人々から選ばれたのか。脱北した元北朝鮮軍兵士や専門家らの証言を総合すると、3つの顔が浮かび上がる。それは、「忠誠心があり」、「貧しく」、「純粋な」人々という特性だ。
2012年8月、南北軍事境界線を越えて脱北した元北朝鮮軍兵士で、今は韓国の映画俳優として活躍しているチョン・ハヌル氏は1994年11月、日本海側の咸鏡南道咸興で生まれた。高級中学校(高校)を卒業した2011年春、軍に入隊した。本当は地域の体育団や体育系大学に進学したかったが、家庭が貧しかったので諦めた。当時、男子の同級生は35人ぐらいいたが、25人ほどが軍隊に入り、残りが就職するか大学に進学した。チョン氏は最前線の非武装地帯勤務を命じられた。チョン氏は「党や政府の幹部の子弟は、軍隊に入らない」とも語る。チョン氏の両親は朝鮮労働党員だったため、忠誠心があると判断されて最前線に送り込まれたようだ。