政治

2024.12.09 13:30

政治の混迷と経済の停滞:伊藤隆敏の格物致知

立憲民主党の野田代表は、分厚い中間層を作ると訴えていたが、これも具体的にどのようにしてそれを達成するのかの具体策は聞かれなかった。国民民主党は、社会保障保険料負担の軽減も含めて「手取りを増やす」という具体策を打ち出していたのが注目される。その財源をどうするのかについての議論はなかったが、例えばGPIFの目標を上回る超過リターンの活用まで踏み込んでいたら政策としては整合性のあるものになったであろう。
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与野党ともに、「物価高対策」を掲げていた。エネルギー補助金の継続などは石破政権からも提案されていた。しかし、石油元売りへのガソリン価格低減への補助金や電力会社への電力料金引き下げへの補助金は、経済政策的に考えると愚策である。車に頼らざるをえない世帯への支援、家計の電気代高騰の不満をかわすための電力料金高騰の緩和が目的であれば、世帯所得に応じた所得支援(負の所得税)が、目的を達するためにいちばん効率的な手段となる。

エネルギー価格の上昇は、化石燃料から再生エネルギーへの転換を促すためのシグナル、また脱化石燃料のための技術革新のインセンティブにもなるので、それ自体を否定して、2022年1月から累積で7兆円もの補助金で価格を下げるというのは愚策であった。

経済対策として補正予算を組むと石破首相は明言しているが、これから議論を詰めていく必要がある。補正予算の使途は何なのか? そもそも大規模補正が必要なほど実態経済(総需要)は悪いのか?
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むしろイノベーションが起きていない、生産性が上がっていない(総供給問題)のほうが問題なのではないか? 財源はどうするのか、また国債発行に頼るのか、等を議論していくことが必要だ。これらが、衆院選の争点にならなかったのが残念だ。


伊藤隆敏◎コロンビア大学教授。一橋大学経済学部卒業、ハーバード大学経済学博士(Ph.D.取得)。1991年一橋大学教授、2002~14年東京大学教授。近著に、『Managing Currency Risk』(共著、2019年度・第62回日経・経済図書文化賞受賞)、『The Japanese Economy』(2nd Edition、共著)。

文=伊藤隆敏

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