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2024.12.04 10:30

シリア情勢の裏で蠢く思惑 ロシアの弱体化とトルコの暗躍が中東勢力図を塗り替える

より広い視点から見ると、反体制派によるアレッポ奪還は、中東におけるトルコ系勢力の存在という長年見過ごされていた重要な要素を再浮上させた。ロシアの戦略的展望の弱さが、突如として新たな域外圧力を勢力図に描き加える展開を許したのだ。

トルコの勢力拡大は、広範囲に及ぶ地政戦略的な挑戦状をイランとロシアの両国に突きつけている。その影響はアゼルバイジャン経由で中央アジア諸国にまで届く。カザフスタンがアサドの動向に関心を持っているわけではない。しかし、ロシアの弱体化と資源の枯渇は、何世紀にもわたってロシアが影響力を行使してきた中央アジアにも波紋を広げている。

最近では、ロシアの影響力は極めて薄くなっているように見受けられる。アゼルバイジャンはナゴルノ・カラバフでアルメニアを打ち破ることを許された。中央アジア諸国はトルコと安全保障協定を結び、これまでロシアに頼ってきた各国の体制保証の提供元を徐々に置き換えている。

同様に、イランの戦力投射能力(パワー・プロジェクション)も急速に縮小している。中央アジアから中東にかけて、歴史的にトルコ・モンゴル系民族はペルシア帝国と勢力争いを続けてきた。イランは数世紀にわたり断続的にトルコ系部族に統治されていた時代がある。オスマン帝国も、約4世紀にわたってシリアとイラクを支配していた。しかし、世界史に長く刻まれてきたこの勢力図は、まず1700年代後半にロシア帝国の軍勢が中央アジアの草原を席巻したことで一部が消滅。そして中東でも、第一次世界大戦で敗れたオスマン帝国の崩壊と共に消滅した。

ところが、突如としてトルコの代理勢力がシリアで盛り返したことで、由緒あるトルコの戦略的存在感が復活し、南北にじわじわと広がりつつあるように見える──最大のライバルであるイランとロシアを出し抜いて。

forbes.com 原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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