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2024.12.04 10:30

シリア情勢の裏で蠢く思惑 ロシアの弱体化とトルコの暗躍が中東勢力図を塗り替える

エルドアンは反イスラエル・親ハマスの姿勢を貫いているが、トルコとイスラエルは共にカフカス地方でイランの覇権に対抗するアゼルバイジャンの同盟国であることを忘れてはならない。また、トランプ次期米大統領がイスラエルによるイラン空爆を容認し、ロシアにウクライナの領土占領の継続を許す停戦合意を取り付ける方向で、水面下の取引が進んでいる可能性もある。とすれば、このタイミングでのシリア反体制派の大攻勢は、最終的にロシアに有利となるこの取引の複雑化を狙ったバイデン政権の最後の一手なのかもしれない。ロシア軍が反体制派と交戦せずに部隊を引いた理由の一端も、この取引が絡んでいるのかもしれない。

いずれにしても、イランは負け組となる。そして、経済危機に見舞われているトルコのエルドアンは、国民から「新オスマン帝国主義(新トルコ帝国主義)」への称賛を勝ち取る必要がある。

トルコが支援するシリア反体制派は、長くジハード主義者(イスラム過激派)として非難されてきた。指導者の一部はかつて、ISIS(イスラム国)やアルカイダの幹部として悪事に手を染めていた。しかし近年、彼らは過激な主張をやわらげ、女性の教育を容認し、キリスト教徒の帰還と教会再建を許可し、これまでの過ちを認めて世界にまたがる聖戦よりも、シリア民族主義を前面に掲げている。

とはいえ、彼らは依然としてイスラム主義者であり、やや穏健な姿勢を取ってはいるものの、(控えめに言っても)血塗られた過去を持っていることに変わりはない。ただ、反体制派は、ロシアがアフガニスタンで実権を握るイスラム主義勢力タリバンを支援して以来、タリバンを拒絶せざるを得なくなった。そして、アルカイダの指導者がイランに居住しているため、アルカイダも拒絶せざるを得なくなった。これらは、反体制派の指導者たちと直接面会したアラブ系フランス人ジャーナリストの長文インタビューに基づく情報だ。

興味深いことに、今回の反体制派の攻勢では、ロシア軍だけでなく、アレッポ空港を確保していたクルド人勢力も撤退した。ここからは、クルド人勢力を支援している米国ないしイスラエルが反体制派の攻勢に加担している可能性が疑われる。
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翻訳・編集=荻原藤緒

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