欧州

2024.12.03 17:00

クルスク州のロシア軍、月に100両近くのペースで車両損失 だがこれからが「本番」

Kriegsforscherは、29日の交戦は「本番前のウォーミングアップにすぎません」と警戒している。ロシア側はクルスク州で失った車両数百両の代替を急いでいて、今後の強襲はこれまでとかなり異なる車両の構成になりそうだ。Kriegsforscherは装輪式のタイフーン装甲車やティーグル歩兵機動車など、工場から出荷されたばかりの新車両が多数投入されると予想している。

言い換えると、戦車やBMP、BMD両歩兵戦闘車、MT-LB装甲牽引車といった装軌車両はあまり見られなくなるかもしれない。すでに前線では、やはり装輪式の新造車両であるBTR-82装甲兵員輸送車が増えてきている。

ロシア軍がタイフーンやティーグルのような装甲トラック型車両へのシフトを進めているのは驚くにあたらない。ロシアがウクライナに対する全面戦争を始めてから2年9カ月あまりの間に、ロシア軍は戦車などの装軌装甲車両を中心に各種装備を1万9000点以上も失った。ロシアは新しい車両の生産を増強すると同時に、長期保管していた古い車両を多数引っ張り出すことで損失を補ってきた。

だが、古い車両の在庫は残り少なくなってきている。また、新しい車両の生産は国際的な制裁が重しになっている。ロシアの産業界は、よりシンプルな設計の車両の生産に軸足を移すことで適応してきた。米陸軍の外国軍事研究所(FMSO)に寄せられた論考で引用されているロシアの軍事専門誌の記事によれば、ロシア軍指導部の間では現在、防護された軍用車両向けの部品を国内で開発・製造することなどが「部隊の戦闘即応性を高め、戦闘での損失を減らすための優先的な方向性のひとつ」と考えられているという。

複雑な装軌車両は退場し、代わりにより簡素な装輪車両が参入する。クルスク州の突出部を守る2万人規模のウクライナ軍部隊にとって悪いニュースは、5万〜6万規模のロシア・北朝鮮連合軍部隊が近いうちに車両を使い果たしそうにないことだ。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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