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2024.12.04 10:00

【米国株ウォッチ】好調な決算でも株価下落したアバクロ、今はチャンスか?

Chie Inoue / Shutterstock.com

Chie Inoue / Shutterstock.com

カジュアル衣料やフットウェアなどを販売する米アバクロンビー&フィッチ(ティッカーシンボル:ANF)の株価は、米国時間11月26日の取引で、S&P500種株価指数が0.6%上昇したのに対し、約5%下落した。同業のアメリカン・イーグル・アウトフィッターズの株価もまた、同日に4%下落している。

しかし注目すべきは、アバクロンビー&フィッチ(以下、アバクロ)の株価下落が起こったのは、好調な第3四半期決算の発表後だったという点だ。同決算では、既存店売上高が前年同期比で16%増、EPS(1株あたりの純利益)が同37%増だったと報告され、加えて通期の業績予測も上方修正された。同社の収益は、すべての主要市場、ブランド、顧客グループにおいて増加し、広範かつ多様な成長を遂げている。

では、なぜ株価は下落したのだろうか? その理由はいくつか考えられる。まず、既存店売上高が前四半期比で減少したことが挙げられる。さらに、同社の営業利益率は第2四半期には15.5%だったものの、第3四半期では14.8%へと悪化した。同社の業績予測では、今後も黒字は維持されるものの、成長率は鈍化するとの見通しが示されている。同社は堅調な業績を達成したが、刻々と変化する貿易情勢や、潜在的に存在する関税引き上げに関連する逆風など、複雑な問題に直面し続けている。

12月2日現在の株価である約157ドルは、私たちの目標株価である約158ドルを若干下回る水準だ。この目標株価は、2024年度の予想EPSである10.54ドルに、15.0倍のPER(株価収益率)を掛け合わせて算出したものだ。私たちは、アバクロの2024年における年間収益を前年比15%増の約49億ドル(約7400億円)と予想している。前年同期比で増益となり、通期の業績予測も引き上げられるという良いニュースの後にしては、株価は沈静化している。

過去3年間におけるアバクロの年間リターンは、S&P500よりも振れ幅が大きかった。同社の年間リターンは、2021年に71%、2022年にマイナス34%、2023年に285%だった。

第3四半期におけるアバクロの収益は、既存店売上高が前年同期比で16%増となったことなどに牽引され、前年同期比14%増の12億ドル(約1800億円)と大きく伸びた。優れた価格管理と適切な品揃えが功を奏した形だ。ブランド別の収益を見ると、Hollister(ホリスター)は前年同期比14%増、同社の名前を冠したアバクロンビー&フィッチは同15%増となった。

堅調な収益の成長に加え、収益性も改善している。売上総利益率は0.2ポイント改善し、65.1%となった。営業利益率は前年同期比1.7ポイント増の14.8%だった。その結果、EPSも前年同期の1.83ドルから2.50ドルへと増加した。

特筆すべきは、ブランドとしてのアバクロンビー&フィッチがこのところすばらしい成長を遂げていることだ。同ブランドの収益は、同社にとっての稼ぎ頭でもあるホリスターの収益をも上回る見込みとされている。同社は好調なホリデーショッピングシーズンを見込んでおり、第4四半期における収益は5%から7%の増収が見込まれている。今回発表された通期の業績予測では、収益成長率は当初予想の12~13%から14~15%へと引き上げられたほか、営業利益率は15%台になると予想されている。

forbes.com原文

翻訳=江津拓哉

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