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2024.12.05 08:15

絶滅危惧のサメを救う、美ら海水族館の人工子宮技術

プレスリリースより

プレスリリースより

沖縄美ら海水族館は、胎生のサメの胎仔(ヒトの胎児に相当)の人工子宮を開発しているが、このたび重さが従来型の20分の1という小型の装置が開発された。これがあれば、深海で保護した絶滅危惧種のサメの胎仔を、健康なまま船や車で水族館まで運んで育てることが可能になる。
小型化された人工子宮装置。

小型化された人工子宮装置。

サメには、卵ではなく、母体の子宮で育つ胎生の種類がある。有名なところではシュモクザメ、ホオジロサメ、ジンベイザメなどがそうだが、絶滅危惧種の深海鮫「ヒレタカフジクジラ」もそのひとつ。美ら海水族館では、2020年に開発した人工子宮装置を使い、2021年、世界で初めてヒレタカフジクジラの人為出産を成功させている。また、昨年から今年の2月にかけて6尾の人為出産させた。

2020年に美ら海水族館が開発した人工子宮装置は総重量が1トンという大きなもので、水族館に備え付けてサメの胎仔を育てていた。遠洋の深海でサメの胎仔を保護しても、船で水族館へ運ぶには数日間を要するため、早産胎仔は救えない。そこで、水のろ過フィルターを省略し、8リットル水槽に必要最小限の人工羊水の容器を沈め、それを小型冷蔵庫に納めるという大胆な単純化をはかった。そのおかげで、人力での移動や、自動車は船への積載が可能になったわけだ。

美ら海水族館は、「胎仔の長期間輸送への道を開いた」ことは画期的であり、「人工子宮装置を野生個体の保全のために利用していく上で重要なステップになる」と話している。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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