宇宙

2024.12.03 18:00

「火星に生命は誕生しなかっただろう」著名地質学者が指摘

NASAの火星探査車パーシビアランスが2021年4月6日、探査車の後方約3.9m離れた地表にある火星ヘリコプターのインジェニュイティとともに撮影した自撮り画像(NASA/JPL-Caltech/MSSS)

この地球上でどのようにして生命が生まれたかや、地球以外のどこかでどのようにして生命が誕生した可能性があるかなど、生命自体に関するさまざまな謎の中で最大のものの1つとして、火星でも生命が誕生したのか否かという問題がある。

生命の起源について尋ねようとして真っ先に思い浮かぶ専門家は、地質学者ではないかもしれない。だが実際のところ、地質学者の研究の大半では、現在知られている最古級の岩石の中に埋め込まれた古代生命の痕跡の探索を必要とする可能性がある。そういうわけで筆者は最近、ハンガリーの首都ブダペストの丘陵地帯にある著名な地質学者スティーブン・モイジシュのオフィスで、30億年~40億年前の鉱物サンプルに文字通り囲まれながら取材を行った。

米国生まれのハンガリー人のモイジシュは、コンコリー天文台での取材で、生命の特徴は周囲の環境を変化させることだが、火星に関してこれまで確認されている限りでは、この惑星には生命が存在しないように見えると語った。

モイジシュが1996年に初めてメディアの関心を集めたのは、1984年に発見された有名な南極隕石アランヒルズ84001に火星起源の微化石である可能性のあるものが含まれるとする学説に疑問を投げかけたからだ。この少し前には、モイジシュと共同研究者チームが、学術誌Natureに掲載された1996年の論文で、地球上に最初の生命が誕生した年代を38億年以上前に遡らせる研究結果を発表した。

火星はかつて、前生物的な有機化学反応ネットワークが存在した可能性がある。これは生命への最初の「前進」を示すものだった。だが、実際の生物有機体につながるような生化学を生み出す経路の途上までが火星の限界だと、モイジシュは考えている。

ハンガリー科学アカデミーの教授を務めるモイジシュは今回の取材で、環境との平衡状態が実際に崩れているような化学的作用は、火星には1つも存在しないと語った。モイジシュによると、火星は常に太陽系のハビタブルゾーン(生命生存可能領域)の外側にある。もし実際に火星で生命が生まれたとすれば、今もなおそこで周囲の環境に影響を与え続けているはずだと考えられると、モイジシュは説明している。
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翻訳=河原稔

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