宇宙

2024.12.03 18:00

「火星に生命は誕生しなかっただろう」著名地質学者が指摘

地球での生命の発生を可能にした要因については、どうだろうか。

モイジシュによると、非生物系から生物系への移行には、液体水、化学的非平衡からのエネルギー(化学反応の促進に利用可能な自由電子)、有機化合物と、この3つ全部を組み合わせるための時間が必要になる。この基準を常に満たしている、宇宙で唯一の場所は、流体の外層を持つ岩石惑星の表面だという。


化学的・地質学的接触面

生命の起源は恐らく、実際は接触面の問題なのだろうと、モイジシュは指摘する。

それは、地圏(地球を構成する岩石、大気圏、水圏)と、地圏と相互作用する気体および流体との間の接触面のことだ。

モイジシュによると、この接触面は極めて化学反応性が高い。化学反応レベルで見ると、鉱物の表面には電荷が分布している。完全な鉱物は存在せず、電荷分布には欠陥が含まれているという。

複雑な高分子化合物のRNA(リボ核酸)は、1つには遺伝情報を伝えることができるため、地球上の生命の最終的な前駆物質だった可能性が高い。

これは重要なことだと、モイジシュは指摘する。反復から逸脱することで、情報は対称性を破るからだ。従って、最初の遺伝情報や鉱物表面の化学的な電荷分布に含まれていた欠陥により、最初のRNA型の前生物的分子に単純な情報が伝達されたのかもしれない。

その後は、この種のRNA型分子が遺伝形質を伝えた。

この非常に原始的な段階の後を化学進化(地球上で生命が誕生するまでの化学物質の変化過程)が引き継ぎ、その結果として、進化的淘汰圧に対する適応の効率性と反応性の向上につながったと、モイジシュは説明する。これが生命の始まりなのだという。

対称性を破る

モイジシュによると、RNAは恐らく鉱物の表面との相互作用により、対称性を破り、情報を発生させた。この相互作用によって、何らかの原始的な情報がRNAの原材料物質に伝えられたのだ。だが、基本的にランダムで珍紛漢紛な情報から、複製のための指示を符号化して与える情報へとどのようにして進んだかについては、これまでのところ謎のままだという。
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翻訳=河原稔

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