スティーブン・ジェンガロが率いるスタイフェルのアナリストは、テスラの目標株価を、従来の287ドルから411ドルへと43%引き上げた。この目標株価は、ファクトセットが追跡する45人のアナリストの中で最高値となっている。
「イーロン・マスクが支援したトランプの大統領選での勝利は、テスラに非常に強い追い風をもたらすことになる」と、ジェンガロは12月1日の顧客向けメモで説明した。
ジェンガロは、テスラの物議を醸す完全自動運転機能の「フルセルフドライビング(FSD)」や、無人ロボタクシーの「サイバーキャブ」を規制当局が承認する可能性がより高まったことを、今回の目標株価の引き上げの主な理由に挙げている。
テスラの株価は2日の市場で約3.5%上昇して357ドルの終値をつけ、2022年4月以来の最高値を記録した。
一方でスタイフェルのアナリストたちは、「自動車メーカーとしてのテスラが、過大評価されていることは明らかだ」とも述べている。彼らは、トランプの新たな政権がEVの購入者に対する7500ドル(約113万円)の連邦税額控除を廃止する見通しであることを理由に、テスラの車両の需要が減少し、この部門の利益が減少すると予測している。
つまり、スティフェルは、テスラの自動運転や人工知能(AI)関連のテクノロジーが収益化に結びつくことに大きな期待を寄せており、既存のEV事業への冷めた見解をはるかに上回る楽観的な見通しを示している。
モルガン・スタンレーのアダム・ジョーンズ率いるアナリストは、テスラの自動車事業の1株当たりの価値を、現在の株価の5分の1未満である63ドルと見積もっている。しかし、同社は、スティフェルと同様のテスラのAIやロボティクスに対する楽観的な見方から、テスラ株の「買い」推奨を維持している。
このことは、ウォール街におけるテスラの長期的な方向性に対する楽観論が高まっている一方で、同社のEVセグメントの将来への期待が低下したことを示している。「テスラが自動運転を実現できないと考える人は、テスラの株を保有するべきではない」とマスクは7月に述べていた。
「テスラが単なる自動車メーカーではないことは明らかだ」と、ジェンガロは主張し、テスラの1兆1000億ドル(約165兆円)の時価総額が、次に価値が高い自動車メーカー10社の合計を上回っていることを指摘した。
テスラの株価は、大統領選以降に約41%上昇したが、ファクトセットがまとめたアナリスト予測によると、同社の年間売上高は、2010年の上場以来で最も低い伸びにとどまる見通しで、年間の利益も2017年以降で初めて減少するとされている。
専門家たちは、トランプ新政権の規制緩和がテスラに恩恵をもたらすという見方でほぼ一致している。一方、EVの税額控除の撤廃は、テスラに他の自動車メーカーほどは、大きな影響を与えないだろうと考えている。
(forbes.com 原文)