サイエンス

2024.12.04 17:00

パートナーとの関係に悪影響を及ぼす「自立心過剰」、見極める3つのサイン

Nadia Snopek / Shutterstock

人は生まれつき、他者とのつながりを必要としている。ところが、一部には、人とのつながりを望まない人も存在する。

ここで、思い浮かべてみてほしい。親から愛されたい、と切に望んだのに、冷たくあしらわれ、恐怖心や欲求、苦痛の重みを自ら背負い込まざるを得なくなった子どものことを。

そうした子どもは、孤独な日々を送るうちに、幼いうちから、自分で自分をなぐさめ、人生の苦難にたったひとりで立ち向かうすべを身に着けるようになる。誰も助けてくれないのだから。そして成長するにつれ、他人は当てにならないこと、関係は破綻すること、人と絆ができても裏切られる可能性があることを学んでいく。自分だけを頼りに、生き抜き、成長していく。

そうした過程を経て大人になった人にとって、自立とは単なる選択肢ではない。ライフラインであり、安全を保つための生き方だ。しかし、パートナーと関係を結ぶようになるうちに、苦労して手に入れた自分の自立心は、強みであると同時に、障壁でもあると気づくようになるかもしれない。自立心によって、へこたれない強さが育まれる一方で、「過剰な自立心」は、人と本当に結びつくことを妨げる障壁となり、自立は孤立へと変わってしまう。

自分が本当に必要としている「親密な関係性」を、過剰な自立心が阻んでいる可能性があることを示す3つのサインを紹介しよう。

1. 助けを求めることに抵抗がある

過剰な自立心の持ち主は、他の人に助けを求めることに、強い抵抗を示すことが多い。その根底には、弱さを見せることへの恐怖心がある。

自分のことは自分でできるという自己充足性と強さを同一視しており、人を頼れば、自分が他に依存するような弱い人間だと認めることになる、と考えているのだ。弱さや依存はいずれも、苦痛や不安を引き起こしかねないものだ。

幼少期の対人経験が、成人後に恋愛関係をもった際の行動をどう方向付けるかに着目した研究が、2012年に学術誌Current Directions in Psychological Scienceで発表された。数十年にわたるこの研究では、幼少期に形成されるアタッチメント(愛着)パターン(例えば、自分の面倒を見てくれる人と揺るぎない絆を築けたか否か、など)が、のちの恋愛関係における感情制御や対立解消、率直さを左右することが明らかになった。

幼いときに、保護者から十分な支えを得られなかった人は、防衛機制として、自分だけを頼りにするようになりがちだ。そうした人は、感情的な困難や個人的な困難に直面すると、パートナーの「重荷」になりたくないからと、問題を自分の胸にしまい込むことがある。そうした状況が続けば、やがては2人のあいだに隔たりが生じる可能性がある。人に助けをなかなか求められない人や、弱さを見せたがらない人は、心理的な苦悩や孤独を募らせることが多いのだ。

過剰な自立心の持ち主が、そうした傾向を乗り越え、他人と有意義なつながりを育むには、小さな一歩として、弱さを見せることから始めよう。練習として、ちょっとした場面で人に助けを求めるようにするのも一案だ。

例えば、週末の行動など、個人的な判断を行うときにパートナーの意見を聞いたりするのもいい。家事を手伝ってほしいと依頼するのもいいだろう。こうしたささやかな行為によって、安心感があって支え合える環境で、人を頼るとはどういうことかを実感でき、相互依存は人間関係に伴う前向きな側面だという見方が少しずつ再形成されていく。

自分の弱さを受け入れることで、パートナーを頼れるようになり、過剰な自立心は、バランスの取れた結びつきへと変わるだろう。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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