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2024.12.04 08:15

AIへの不安感が増加中、心配する懸念事項とは

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電通が実施した「AIに関する生活者意識調査」第3回目の結果が公開された。こちらは2024年7月、全国15~69歳の男女3000人を対象に、AIの利用状況や意識について調査されたもの。AIが日常生活やビジネスシーンに浸透する一方で、利用者の不安や懸念が依然として高まっており、AIに対する複雑な思いと現状を浮き彫りにした。
 
【調査概要】
・目的:生活者のAIに関する認知、活用状況、期待・不安、課題などの傾向を把握し、AIへの理解促進や関連ビジネスの成長、ひいては産業の発展に貢献
・対象エリア:日本全国
・対象者条件:15~69歳の男女
・サンプル数:3000(人口構成比に合わせてウェイトバック集計を実施)
(内訳)
208(15~19歳/性別ごとに回収)
2792(20~69歳/性別・10歳ごとに回収)
・調査手法:インターネット調査
・調査期間:2024年7月18日~7月22日
・調査機関:株式会社電通マクロミルインサイト
 

AIサービス利用者は3割越え

 
調査によると、AIサービスを「積極的に使用している」または「必要に応じて使用することもある」人は全体の33.4%。15~19歳の若年層がもっとも積極的で、その層の男性58.9%、女性43.6%が何らかの形でAIサービスを利用していた。しかし一年前の同様の調査(2023年11月実施)と比べ、30代男性と15〜19歳女性ではAI利用が減少する結果となった。
 
Q.あなたのAIサービスの利用頻度として最も当てはまるものを一つお知らせください。※利用するAIサービスが複数ある方は、その中で最も利用頻度が高いサービスを想定してお考えください。

 
 
 

 
 
AIに対する懸念としては、「フェイクニュースや誤情報の増加」(35.9%)や「生成された情報の信頼性」(31.6%)が上位を占めた。また「AIを使いこなせる自信がない」という不安の声も多く挙げられている。
 

Q.昨今のAIに関する出来事やニュースを見聞きして、あなたが不安に感じていることについてお伺いいたします。あなたが、AIに対して不安に感じていることを全てお知らせください。(複数回答可)

 
 
興味深いのは、一年前の同様の調査と比較して、こうした不安が全体的に増加している点だ。生成AIの躍進的な進化に期待と畏怖の念を抱きながらも利用が進んだこの一年だったが、今回の結果に調査担当者は「業務や実生活での活用としてはいまひとつイメージがつかみにくく、継続使用にはつながらなかったのではないか」と推測している。
 
他にもクリエイティブ分野には大きな影響を及ぼしているようで、今回の調査で「AIに模倣されることで好きなクリエイターの独自性が薄れること」を懸念する声が前回の調査結果から増加。また「自身が作成した作品の著作権侵害」を懸念する声も増加しており、クリエイターにとってAIがリスクとチャンスを併せ持つ存在であることが明確になった。
 
 

進む企業でのAI活用、取り残される中小企業

 
ビジネスシーンにおける生成AIの活用状況では、従業員500人以上の大企業での導入が顕著だった。導入率は約3割に達し、「導入を検討している」を含めると4割を超える。一方で、従業員規模の小さい企業ではAIの導入が遅れているため、全体の平均では18.7%にとどまった。
 
Q.お勤め先における生成AIの導入について、お勤め先の現在の状況に当てはまるものを一つだけお選びください。
 

Q.今後ビジネスシーンにおいてもAIの利活用が進んでいくとした時に、どのくらいの時期に導入を考えますか。以下の内容について、それぞれあなたの考えに最も近いものを一つお知らせください。※お勤め先の方針ではなく、あなた個人のお考えをお知らせください。


 
一般企業における人手不足対策としてのAI導入意向は8割超で、人手不足対策やコスト対策、ビジネスチャンスのいずれの目的でも前回調査より増加。特に「半年以内の導入意向」が大きく増加している。
 
また、AIサービスを導入した・導入を検討している企業の課題上位5項目は「運用コストが高い」(14.3%)、「導入コストが高い」(13.6%)、「導入・運用の方法が分からない」(11.6%)、「導入・運用に向け、社員に対する教育・研修が必要となる」(11.2%)、「導入・運用に向け、知識・技術を備えた専門スタッフが必要となる」(10.0%)だった。これらの課題を見ると、大企業に比べ予算や人材面でも制限がかかりやすい中小企業にとって、AI導入にはさらに時間を要することが予想される。
 

 
 今回の調査では、AIがもたらす利便性や効率性に対する期待が高まる一方で、倫理的リスクや社会的影響への不安が拭えないことが示された。今後もこの傾向は平行線のまま進むことが予想される。人や企業が抱える不安や課題をクリアするには、社会全体での明確なルールづくりが急がれるだろう。

プレスリリース

文=福島はるみ

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