歴史的な建造物のため、元の形に修復し、内部には当時の服装をした人形と生活道具を置いて、昔の暮らしを再現した博物館にするというのが定石だが、人形ではなく今という時代を切り取る生きたアーティストに住んでもらい、過去をただ保存するだけではなく、未来を生み出していくための架け橋にしようという考えだ。
ドバイで活躍するフランス人アートキュレーターで、このプロジェクトのアーティスト選考委員会の委員長でもあるシリル・ザミットさんは、「ウズベキスタンには、素晴らしい伝統工芸の文化がある。職人技はアートになりうるというインターナショナルな視点を与えたい」と語る。
アーティストと地元の人たちの交流を図るために、食事などの世話は地元の人が行うほか、言語的なコミュニケーションがうまくいくように、4室あるうちの少なくとも1室はウズベキスタン人のアーティストが選ばれると決まっているという。最初の募集は1月5日まで行われ、アートレジデンスは2月3日から8週間となる。
また、このマドラサを皮切りに、ウズベキスタン政府はアガ・カン・ディベロップメント・ネットワークと共同での遺跡復興を進めており、今後、サマルカンドの一大遺跡、ビビハニム・モスクの復興、古都ブハラでもプロジェクトを行う予定だ。来年9月にはブハラでビエンナーレが行われ、その際には復興中の遺跡もアートプロジェクトの一つとして展示の一つとなるという。
アートレジデンスのみならず、遺跡とアートを組み合わせ、そこで新たに生まれるクリエイティビティを発信してゆく。遺跡を今に活かす保全の形は、クリエイティブエコノミーの一つのモデルケースとして他の国や地域でも取り入れられていきそうだ。