北米

2024.12.05 09:30

「NASAの予算削減」を狙うトランプ新政権、直面する共和党内部からの反発

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2005年のスペースシャトル計画の終了後に実施されたNASA内部の調査では、オハイオ州のグレン研究センターを閉鎖し、カリフォルニア州のエイムズ研究センターのプログラムを移転し、ミシシッピ州のジョン・C・ステニス宇宙センターを閉鎖または統合することが推奨された。しかし、そのいずれも実現しなかった。代わりに、3つの小規模施設のうちの1つのカリフォルニア州のサンタスサナフィールドラボラトリーのみが閉鎖された。それから約20年後、残りの2施設は依然として運営中だ。

2010年以降、NASAは不動産の一部を手放しただけだと、11月の監察官事務所の報告書では指摘されている。

一時、閉鎖が検討されたオハイオ州のグレン研究センター(NASA/GRC/Marvin Smith)

一時、閉鎖が検討されたオハイオ州のグレン研究センター(NASA/GRC/Marvin Smith)

スペースXと政府効率化省(DOGE)の役割

地元の政治的な反対を乗り越えるために必要なのは、過去数十年間に断続的に提案されてきたアイデアを実現することだと、トランプのNASA移行チームの関係者はフォーブスに語った。それは、1988年から2005年にかけて5回にわたり軍事基地を閉鎖するために設立された「基地再編および閉鎖委員会(BRAC)」をモデルにした超党派の委員会を設置することだという。

しかし、これには多くの年数を要する見通しだ。トランプの新政権は、短期的には政府全体で数千億ドルの支出削減を目指す広範な努力の一環として、NASAのコスト削減方法を模索する可能性が高い。トランプは、マスクと実業家のヴィヴェック・ラマスワミらを政府効率化省(DOGE)のトップに任命した。

宇宙産業の専門家たちは、トランプ政権がNASAや国防総省に対して、より多くのオペレーションを民間の宇宙企業に委託するよう促すと予想している。NASAにおける最大のコスト削減策の1つは、マスクとスペースXに利益をもたらす可能性がある。それは、政府所有のロケットの「スペース・ローンチ・システム(SLS)」の廃止だ。このロケットは、米国の宇宙飛行士を月に再び送ることを目指すアルテミス計画の主力であり、1回の打ち上げに40億ドル(約5990億円)を要する。これをスペースXの「スターシップ」ロケットに置き換える可能性がある。

しかし、議会のメンバーは、自分たちの選挙区でのSLS関連やNASAのセンターの雇用を守るために、これに反発する可能性が高い。

カリフォルニア州を除けば、NASAの施設の多くはレッドステート(共和党が強い州)に集中しており、共和党政権にとってこれらを閉鎖することは複雑な問題だ。ドライヤーは「NASAが縮小されれば、雇用や経済効果が失われるため、地元の議員がNASAに対する支援をやめる可能性がある。その結果、NASAが議会から宇宙プログラムのための資金を得るのが難しくなるリスクもある」と指摘した。

「この効率化の取り組みは、ミシシッピ州やオハイオ州の議会の支持を永遠に失うリスクを冒すほどの価値があるだろうか?」と彼は問いかけている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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