事業継承

2024.12.05 09:15

「アトツギアワード2024」グランプリは、環境大善とケルンの経営者



グランプリに輝いたケルンの代表取締役社長・壷井豪は、神戸市内で8店舗を展開するベーカリーの3代目。2021年、フードロス削減と社会的弱者支援の同時解決を図る、経済循環型サービス「ツナグパン」を開始。プロジェクトの鍵となるのが、パンと交換できる「エシカルコイン」だ。

廃棄予定のパンを詰め合わせで販売する際、購入者にエシカルコインを配布するほか、直営店での売上に応じて児童養護施設や母子生活支援施設、ファミリーホームにエシカルコインをプレゼントしている。壷井は「福祉施設の子どもたちは、エシカルコインを持ってパン屋に行き、ほかのお客さまと同じように自分でパンを選ぶことができる。真の目的は、自分自身で人生を選択し、自分ごととして楽しむ日常を過ごしてもらうこと」と、社会的な意義を語った。



グランプリに選ばれ、壷井は「普段の暮らしでなかなか見えないところを見るようにしていけば、自分の事業が社会や地域に対して存在必要性を最大化させられる。僕はそこに可能性を感じている」と語った。

アトツギ企業が提示する、世界に通用するビジネスモデル



審査員を務めた、マクアケ 代表取締役社長・中山亮太郎は「職業柄、いろんなピッチコンテストを拝見しているが、今回は圧倒的にユニークでありハイレベルだった。スタートアップではIT系が多く、アトツギのみなさんのように新たに工場を作る、畑を耕すなどのフィジカルな動きをする人はほとんどいない。アトツギのみなさんによるさまざまな仕掛けが、世界で勝つビジネスのモデルになるだろう」と総評を述べた。

同じく審査員の関西大学 商学部 教授・沈 政郁は「みなさんのプレゼンテーションを聞き、思い浮かべたのはリンチピンというキーワード。リンチピンはマーケティング用語で、組織の中でなくてはならない要(かなめ)という意味。まさに、今日ここに登壇されている全員が、日本社会を支えるリンチピンになると感じた」と、アトツギたちのさらなる飛躍に期待を寄せた。



一般社団法人ベンチャー型事業承継の代表理事・山野は「アトツギはスタートアップとは異なり、結果を出すまで時間がかかる。今回のアワードでは、イノベーションやソーシャルグッドは時間をかけてでも事業の展開を考える経営者の覚悟から生まれていると感じた。表彰者のようなアトツギ経営者の活躍で、日本の未来は明るいものになるだろう」と締めくくった。

表彰されたアトツギたちの多くは、自治体や大学、企業と協力し合いながら新しいアイデアを実行することによりで事業規模を拡大。伝統産業の再興、人材不足の解消、地域雇用といった、社会の課題解決に貢献している。ファミリービジネスの経営に悩む後継者は、アトツギ経営者の成功事例を参考にしてみてはどうだろうか。

文=長尾ようこ 写真=ベンチャー型事業承継

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