イノベーション部門のグランプリは環境大善の窪之内誠
会場では表彰者6名がそれぞれ6分間で、先代から受け継いだ事業内容、新たな取り組みによる実績、社会的意義、インパクトをプレゼンテーション。「イノベーション部門」では、既存の経営資源を活用したイノベーションを起こし、社会に新たな価値を創出する企業を表彰した。あつまるホールディングスは熊本県山鹿市と連携し、新しいかたちの養蚕業をおこなう。無農薬人工飼料、世界初・周年無菌養蚕工場により、高品質なシルクを安定生産することに成功した。また、シルクのタンパク質に着目し、化粧品、医療デバイス、動物用経口ワクチンへと用途を拡大している。
アルケリスは、金型製造業のニットーから2020年にスピンオフで設立された。立ち仕事の負担を軽減するアシストスーツを医工連携、産学連携で開発。人手不足の解消や健康経営を目指す病院や製造工場で導入が進む。
グランプリとなった環境大善の代表取締役・窪之内誠は、牛の尿を原料とする消臭液や土壌改良剤などを開発・販売する会社の2代目。科学的データがない、注目されるのは地域のビックリ商品としてのみという現状を変えるべく、窪之内は研究開発とデザイン経営に着手。再現性のある製造方法の確立と、独自のアップサイクル型循環システムを構築した。Forbes JAPANのスモール・ジャイアンツ アワード 2022-2023でも、「ローカルヒーロー賞」を受賞している。
また、社内外のコミュニケーション設計をおこない、イノベーションを起こしやすい土壌を整備・運用したことで、2024年4月に「デザイン経営」企業として経済産業大臣より知財功労賞を表彰された。現在は、持続可能な航空燃料(SAF)として微細藻類成長促進剤の開発を進めている。
今回のグランプリ選出を受け、窪之内は「過疎化が急激に進む北見市で、地域産業を盛り上げたいという気持ちで事業をおこなっている。今回のグランプリをきっかけに、さらに地域への還元を進めたい」と語る。
ソーシャルグッド部門のグランプリはケルンの壷井豪
「ソーシャルグッド部門」は、企業としての経済活動を通じて自社に留まらず業界や地域も含めた多様な関係者に価値を提供し、持続可能な社会の実現に貢献していることが選定基準。早和果樹園の秋竹俊伸は、有田みかん農家の2代目。7戸の農家で法人化し、ボトリング工場と搾汁工場を新設。ジュースを中心とするみかん加工品を国内外の約4000店舗に出荷している。通常は廃棄される皮や薄皮をジャム、生薬の陳皮などに加工することで新たな価値を生み出した。
井上は、電気設備の販売や画像AIソリューションなど電気関連を展開する企業。2003年、井上が3代目に就任した時は債務超過10億円、借入金20億円、限界利益5.8億円だった。元ホテルマンの井上は「人を大切にする企業こそが、持続可能な地域社会を作ることができる」と考え、社員が自由に提案できる仕組みを作り、経営陣はサポートに徹する組織改革を実行。2023年の限界利益は10.8億円、自己資本比率57%、実質無借金の企業に生まれ変わらせた。