フランス社会の不平等問題を研究する「不平等観測所」は、欧州第2の経済大国フランスで裕福であることの意味について定期的に報告している。本稿ではその内容を紹介しよう。
フランスの会社員の約半数が月収33万円以下で生活
不平等観測所は、仏国立統計経済研究所(INSEE)が公表した2022年の統計に基づき、国民の所得水準に関する調査を行った。それによると、同国ではフルタイムで働く民間企業の従業員の半数が、手取りで月2092ユーロ(約33万4300円)未満の収入しか得ていないことが明らかになった。4分の1は月収1670ユーロ(約26万6900円)未満で、月に3000ユーロ(約47万9300円)以上稼いでいるのは4分の1弱に過ぎなかった。上位10%の高所得者層の月収は4170ユーロ(約66万6500円)以上で、さらに上位1%に入るには手取りで月1万ユーロ(約159万8300円)以上稼ぐ必要がある。その金額を超える統計は公表されていない。今回の数字は2019年の統計をわずかに上回っただけだった。このデータは収入のみを対象としており、生活水準の違いなどによって大きく変化する支出については考慮されていない。年齢も考慮に入れられていないため、労働生活でのそれぞれの立ち位置によってデータがゆがむのもやむを得ないだろう。また、フランスでは公的部門に所属する公務員の方が資格を求められ給与が高い傾向にあるため、この統計は一般的に公務員より給与の低い民間企業の会社員を対象にしていることにも留意しなければならない。
首都パリの生活費は各区で異なる平均的な家賃によって左右されるものの、一人暮らしの場合、家賃を除くと平均で月に1091ユーロ(約17万4400円)を支出することになる。米国のニューヨークと比較すると、パリの平均的な生活費は約25%低く、家賃は約60%安い。パリの中心部にある1部屋のアパートの家賃は平均で1304ユーロ(約20万8500円)、中心部以外では平均で1000ユーロ(約15万9900円)程度だ。