南アフリカでは2023年に大規模な計画停電(業界では「ロード・シェディング」と呼ばれる)が頻繁に行われるという危機があったが、今年はこれまでのところそれほど深刻な事態には至っていない。だが、現地の人々はこの変化は一体何によるものなのか、なぜもっと早く停電を回避できなかったのか、いまだに疑問に思っている。そして今、その答えが明らかになりつつあるようだ。というのも、電力公社Eskom(エスコム)はこのほど、来年36.15%の電気料金の値上げを、さらには2027年と2028年の追加値上げもエネルギー規制庁に申請したからだ。安全な飲料水の確保ですでに不安を抱えている国民は今、電気代の上昇や頻発する停電で生活水準全体が壊滅的な打撃を受けることも心配しなければならない。
インドは根本的な電力不足に直面しており、需要ピーク時の夜間の電力不足は2027年までに20〜40GWに達すると予想されている。一方、イスラム国家のイランでは燃料不足により政府は計画停電の実施を余儀なくされている。同国の多くの地域では冬は厳寒となることもあり、長きにわたって苦しんできた人々にとって計画停電の開始は我慢を強いられる長く厳しい冬になるかもしれないことを意味する。
そしてロシアは、隣国ウクライナとの戦争を始めてから3度目の冬を迎えようとしている。ロシアはこれまで、エネルギーの保有を武器にしてきた。ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)のマイニング(採掘)は取引を確定するのに使われるプロセスで、実行には膨大なエネルギーを必要とする。同国の特定の地域でマイニングを禁止したことによる影響が一般的なエネルギー供給に及ぶ場合、それがどのような形で現れるかはまだわからない。
だが、それとは別にロシアの電力不足が戦略上、真に長期的に悪影響を及ぼし得る分野がある。それは人工知能(AI)だ。そもそもAIの利用はインターネットに依存しているものだが、これも影響を受ける。
ロシアは今年、BRICSの議長国として首脳会議を開催した(ロシアのほかブラジル、インド、中国、南アフリカ、イラン、エジプト、エチオピア、アラブ首長国連邦が加盟)。もちろんBRICSの使命はテクノロジーやインフラなど多くの分野における長年にわたる欧米の支配を打破することだ。
中国の習近平国家主席やインドのナレンドラ・モディ首相などBRICS加盟国を含む36カ国の首脳や国連のアントニオ・グテーレス事務総長が10月24、25日にロシア連邦・タタールスタン共和国のカザンに集まった。ロシア大統領府は「過去最大規模の外交イベント」とうたった。ロシア国営タス通信が報じたように、ロシアの著名な外交官は「BRICSがデジタル化とAIの最前線に立つ。主要7カ国(G7)や西側の同盟ではない」と大胆なメッセージを発した。