他方で、近年のドイツ政治の動向により、問題は複雑化している。ハーベック経済相をはじめとする政治家は、移民の受け入れを増やすことは労働力不足を補うために必要だが、それだけでは十分ではないと考えている。しかし、こうした見方に対する抵抗が強まっている兆しもあるのだ。
同国では最近、反移民を掲げる極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が、旧東ドイツの州議会選挙で歴史的な勝利を収めた。旧東ドイツは国内でも特に人口減少と農村の衰退が著しい地域だ。極右政党の躍進は、ドイツの経済界に深刻な警戒心を引き起こした。ある著名な企業経営者は選挙に先立ち、AfDが表明する反移民感情は移民の流入を阻み、労働力不足を悪化させるだけだと指摘。また別の人物は、AfDが過去最高の得票数を記録したテューリンゲン州とザクセン州が「経済的破局」の瀬戸際に立っていると警告した。
AfDテューリンゲン州支部のビョルン・ヘッケ共同代表は、外国人労働者の受け入れを促すための取り組みを繰り返し標的にしている。職場の多様性の推進に尽力する中小企業の統括団体に向けて演説したヘッケ共同代表は、これらの企業に「深刻な経済的混乱」が訪れることを祈るとともに、今後はどの企業からも商品を購入しないと表明した。これに対し、同団体のマリークリスティーネ・オスターマン会長は、ヘッケ共同代表が「ドイツ経済の根幹を成す家族経営企業の経済的没落を望んでいる」として、非国民だと糾弾した。
(forbes.com 原文)