その結果、ベトナムが米国に負わせる貿易赤字は、2004年以降に3倍に増加した。米国国勢調査局のデータによれば、米国のベトナムに対する貿易赤字額は、中国、メキシコ、欧州連合に次ぐ4位となっている。
2018年に1期目のトランプ政権が中国製のソーラーパネルや家電製品に関税を課した際、製造業は米国に戻らなかった。その代わり、製造拠点はベトナムやタイ、マレーシア、インドといった他のアジア諸国へと移行した。
2020年5月には、アップルが中国からベトナムにAirPodsの製造を移し始めた。その数カ月後には、フォックスコンがアップルの要請でiPadやMacBookの一部の組み立てをベトナムへ移す計画を発表した(アップルは一部の生産をインドにも移している)。米国国際貿易委員会の統計によれば、2018年から2019年にかけてベトナムからの電子機器の輸入はほぼ倍増した。
「ベトナムは、米中間の関税を利用して、貿易戦争の初期に米国市場への参入を果たした国の1つだ。ベトナムと中国の間に関税の差がある限り、企業はベトナムに製造拠点を移し続けるだろう」とカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の経済学教授のパブロ・ファジェルバウムは述べている。
トランプの息子もベトナムに投資
最近では、海運大手のマースクがベトナム北部のハイフォン港湾地域で初の保税倉庫を開設し、その初めての顧客としてアマゾンのベトナム支社が契約を結んだと発表した。また、デンマークの玩具メーカーであるレゴも、ビンズ「ン省の10億ドル(約1500億円)規模の新工場がほぼ完成し、来年初頭には稼働予定だと発表した。ベトナムはまた、トランプの一家にも接近している。次期大統領の息子でトランプ・オーガニゼーションの副社長のエリック・トランプは、10月初旬にハノイから約60キロのフンイエン市で、15億ドル(約2280億円)規模の高級ホテルやゴルフ場を含む不動産開発プロジェクトを立ち上げると発表した。
「ベトナムには、高級ホスピタリティとエンタメ分野の大きな可能性がある。我々は現地パートナーと協力し、地域のラグジュアリーを再定義していく」とエリックは声明で述べていた。
ベトナム国内の投資家も、こうした動きを絶好の機会と捉えている。現地の投資会社VinaCapitalのマイケル・コカラリは、このトレンドが物流やクリーンエネルギー企業の需要を生み出し、成長を促進すると述べている。
かつては多くの企業が中国に製造拠点を移したが、トランプの新たな関税は、製造業のベトナムへのシフトを加速させていくはずだ。
(forbes.com 原文)