サイエンス

2024.11.30 15:00

結婚生活で受け入れるべき「2つの現実」とその対策

2. 相反する優先事項のバランスをとる

心理療法士で、恋愛や夫婦関係の専門家としても名高いエスター・ペレルはしばしば、恋愛関係における「相反する優先事項」に言及している。パートナーとの関係とは、それ自体が「相反する欲望のるつぼ」なのだという。

よりわかりやすい表現を使えば、結婚生活は緊張の上に築かれているということだ。ペレルは相反する感情として「安心と興奮、地に足がついた安定感と天にも昇る心地、愛情がもたらす安らぎと情熱の激しい炎」を挙げている。いずれも、長きにわたる関係の中で生じ得る二律背反に関する、いくつかの例にすぎない。それぞれにパートナーとの関係を健全に保つのに不可欠な何かが存在するが、それぞれが当事者を真逆の方向に引っ張るものでもある。

安全や安心感、安らぎといった感情は、人間の最も基本的な欲求に含まれており、パートナーとの関係においても間違いなく必要なものだ。他方、興奮や冒険も同様に重要だ。人を駆り立て、新たな発想やスリルをもたらすのはこうした感情だ。両方を同時に得ることはできないが、どちらも同じくらい不可欠だ。

学術誌Journal of Experimental Social Psychologyに2014年に掲載された研究論文でも、恋愛関係においては「個人としての自分を保ちたい」欲求と「相手との一体感を持ちたい」欲求があり、これが相互に相反すると指摘している。つまり、「私」でありたいという欲求と「私たち」でありたいという欲求といえるだろう。

少なくとも個人主義が幅を利かせている欧米の世界では、カップルは自身の欲求とパートナーの欲求、さらには個人としてのアイデンティティーと、カップルとしてのアイデンティティーの間でバランスをとろうとして、緊張に直面するはずだ。

ここからわかる結婚生活における現実とは、それぞれ重要だが相反する優先事項の間で、カップルは常にバランスをとるよう求められるということだ。安心できるパートナーとの安定した関係に安らぎを得たいと強く願いながらも、その結果として冒険や情熱の火花が散るような感覚を失うことを恐れる。また、パートナーと共通のアイデンティティーを築き上げるべく努力しつつも、それと引き換えに、そもそも2人を結びつけたそれぞれの個性を失ってしまうリスクがつきまとう。

この問題の解決策は、相反する2つの欲求を維持することにある。そのためには、意図と犠牲、妥協が不可欠になる。困難な道ではあるが、お互いにとって努力する価値があるのは間違いない。

要するに、安心感を保ちつつも、自発性に身を任せる時間もつくるということだ。それには、お互いの自律性を尊重しながらの親密さや一体感が必要になる。

forbes.com 原文

翻訳=長谷 睦/ガリレオ

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事