どんな人間関係にも、いざこざはつきものだ。これは自然の成り行きで、避けられるものではない。しかし、ポジティブなやりとりのほうも同様に、自然なものであるべきだ。いざこざの埋め合わせとして義務感から、意味のないハグやキス、「ありがとう」の言葉や褒め言葉を5つ詰め込まなければいけないと感じているのなら、それは期待した機能を果たさない可能性が高い。むしろ、お互いにとっておざなりなものにしか感じられないだろう。
愛情というものは、統計やスコアをとったり、動向を追跡したりするべきものではない。「5つ」というルールに制約されるべきでもない。それどころか、愛とは、無意識のうちにあふれだす「普通の感情」であるべきだ。「5対1ルール」の真の魔法は、ポジティブなやりとりが真心からのものである時のみ、効果を発揮する。つまり、相手をとりなすための戦略ではなく、正真正銘の愛情表現でなければならないということだ。
こうした場面において、ポジティブなやりとりが単に危機回避策として用いられた場合、そうした行動をどれだけとっても、いざこざを真の意味で埋め合わせることはできない──これが、結婚生活における現実だ。
愛情や思いやりを、ToDoリストに落とし込むことはできない。こうした感情は、心からの愛情や敬意から自然に湧き出るものではなくてはならない。「適正な比率を保つ」ための努力が単なる手続きに感じられるとしたら、本来は親密さや心のつながりを守るためであったこの比率によって、かえってそうした大事なものが失われるリスクが生じる。
パートナーへの思いやりとは、がんじがらめの強制されたタスクであってはならない。それは、当たり前のこととして受け入れられ、大切にされるべきだ。「5対1ルール」は、心からの善意と結びついた時に初めて効果を発揮する。これは、隠れた動機なしに、自然に育まれるものなのだ。