11月中旬、韓国人の男がペルーでそれを試みた。首都リマの空港税関で、タランチュラ320匹、ムカデ110匹、サシハリアリ9匹が押収された。これらはすべて、ファスナー付きポリ袋に濾紙とともに入れられ、男の腰と腹に巻き付けられていた。
こうした節足動物は、金属探知機や熱探知機では発見されないが、税関当局は男の胴回りが異常に大きいことに気付き、検査を実施した。
この手の事件が起こると、空港のセキュリティーチェックをくぐり抜けている昆虫密輸業者はいったいどれくらいいるのかという疑問が浮かぶ。残念ながら、おそらく答えは「多数」だろう。無法状態のペット市場で、こうした珍しい生き物に対する需要が急増しているためだ。
節足動物の国際取引の規模(または合法性)を正確に把握するのは難しい。ほとんどの取引がインターネットの片隅で行われているためだ。それでも、研究者は努力を続けている。学術誌Communications Biologyに発表された研究結果によれば現在、66科371属1200種余りのクモが取引されている。研究チームは「取引されているクモは数百万匹を超え、このうち67%が野生で捕獲されたものだ」と報告している。
このような取引は、外来種の侵入を助長するという点でも、生物多様性が失われる主な要因になるという意味でも、環境に壊滅的な影響を及ぼしかねない。
残念ながら、絶滅のおそれのある野生動植物種の国際取引に関する条約(ワシントン条約:CITES)や、国際自然保護連合(IUCN)などは、無脊椎動物の取引を規制する法的手段をほとんど持っていない。しかも、CITESの対象となっている節足動物はごくわずかだ。たとえば、クモは5万種を超えるが、CITESで規制されているのは40種足らずだ。そのため、取引の監視がさらに難しくなっている。
合法性はさておき、エキゾチックペット市場で特に人気があり、数百~数千ドルの高値で取引されている4種のクモを紹介しよう。