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2024.12.02 13:30

人ありきのM&A、SBS鎌田正彦が描く物流業界の未来

鎌田正彦|SBSホールディングス代表取締役社長

「私は今まで、20年間『無敗』なんです。一回も負けていないし、損もしていない」。SBSホールディングス(以下、SBS)代表取締役社長鎌田正彦がそう言い切るのは、不動産の目利きのことだ。鎌田は、物流業界の風雲児と評され、一代で4000億円企業にのし上がった。その物流の会社が、不動産で負けなしというのはどういうことか。

「SBSは物流会社ではあるけれど、金融と不動産の顔をもつんです。物流には倉庫、土地が必要で、我々は安く土地を購入し、倉庫をつくり、売却。安く借り直して外部に貸し、倉庫内オペレーションを請け負う。いわば資産の流動化といえる手法で伸びてきた」

倉庫面積×売り上げで利益を生み続け不良債権化しないという意味で、負けなしということだ。

同社は2024年2月、千葉県の野田市に約4万坪強の延床面積を持つ巨大物流センターを建設、開業させた。ここは、これからの物流の主役のひとつとされるEC業界の保管・出荷拠点となる。「実は、その隣に3万坪レベルの倉庫が建てられる土地も購入したんです」。近隣の土地も加えると総購入面積は10万坪に迫る。SBS全体では約100万坪強の倉庫面積を保有しており、鎌田はそれを倍にする計画だという。「我々のような小さな物流会社は高いお金で倉庫を借りるのではなく、利益を生み出すために自分たちでつくるしかない」と、控えめな表現を使いながら強気の意志を示す。

SBSが成長する理由はもうひとつある。「M&A」だ。

03年の上場以降、同社はM&Aで事業規模を拡大してきた。佐川急便を脱サラして、「関東即配」を立ち上げ、その歴史はスタートする。

「起業後、ライバルからたたかれ、追い詰められた。明日の金がないほどに。創業2年目あたりがいちばん苦しかった。髪の毛も抜け落ちるくらいにね。従業員の給料さえ払えない。でも人間って、もういいやってあきらめた時点で終わる。朝は必ず来るんですよ。僕はずっとそう思い続けてきた」

創業4年で売り上げが30億円に到達したとき、10年で100億円の会社にすると公言した。

「運送屋なので、誰も100億なんて信じない。でも絶対やるぞと言って10年たった時に本当に100億に到達した。これをさらに1000億にするにはM&Aしかない。さらにM&Aするには上場しなければならない」
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文=フォーブス ジャパン編集部 写真=苅部太郎

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