それぞれの強みとは、それぞれの想いが重なり合ったときに生み出されるものとは、両社が見据える希望とは——。
組織人事コンサルティングのパイオニアとして、多くの企業変革を実現してきたリンクアンドモチベーション。企業のマーケティングやブランディングに強みをもち、経営とクリエイティブを掛け合わせて強い企業づくりを支援するThe Breakthrough Company GO(以下、GO)。2024年11月7日、両社は業務提携契約の締結を発表した。そこで、リンクアンドモチベーション代表取締役社長の坂下英樹とGO代表取締役の三浦崇宏に業務提携の意図や今後の展望を聞いた。
——まずは、それぞれの会社の事業内容について、ご説明ください。
三浦崇宏(写真左。 以下、三浦):近年では、企業からのブランディングの依頼が増えています。GOでは「なぜ、その企業が社会に存在しているのか」を深掘りし、「ステークホルダーのそれぞれにどのような価値を提供していくのか」を再定義していくことにより、経営方針や株主に対する説明の仕方から、採用の方針、営業の仕方やカスタマーサポートの言葉選びに至るまで、あらゆる企業変革を支援しています。
そうした手法のことをブランディングを超えた「パーパス・ディープニング」と私たちは呼んでいて、評価と成果を得ているところです。
坂下英樹(写真右。 以下、坂下):私たちは常々、良い会社を定義するうえでは、組織においても基準となるモノサシが必要だと考え、従業員エンゲージメントの見える化を推進し、企業変革を支援してきました。具体的には、創業間もなく独自の指標として「エンゲージメントスコア」を開発し、16年にはクラウドサービス化した「モチベーションクラウド」をリリースしています。まだモチベーションという言葉が浸透していない時代から着実にデータを蓄積してきたことで、「モチベーションクラウド」は国内最大級のデータベースとなり、従業員エンゲージメント市場のベンダー別売上シェアで7年連続1位(※1)を獲得しています。
両社の強みを掛け合わせ一気通貫のサービスを実現する
——それでは、そのような両社が業務提携するに至った理由を教えてください。三浦:実は、組織づくりのプロフェッショナルであるリンクアンドモチベーションにGOの組織制度改革を支援してもらっていたという経緯があります。その際、モチベーションやエンゲージメントという目には見えないものを取り扱うことにおいてしっかりとした型をもち、再現可能なソリューションとして展開していることに、私は大変な感銘を受けました。
GOは広告会社という認知が強すぎるせいか本当は企業の経営戦略や組織戦略といったインナーの深部にまで踏み込んで企業全体を変えていきたいのに、マーケティング戦略の領域で施策がとどまってしまうことがあります。ことに組織戦略は、企業を変革するにあたって大変に重要な要素となります。そうしたときに、「リンクアンドモチベーションの力があれば、もっと踏み込んでいける」という確信がありました。
GOとリンクアンドモチベーションの力を合わせてクライアントに価値を提供できれば、DXのような、手段としての変革を超えて企業そのもののトランスフォーメーションを支援できるという考えに至ったのです。
坂下:これまでにリンクアンドモチベーションが企業の組織戦略の支援をしていくなかで、GOとクライアントが同一になるということがありました。私たちは、事業や経営とクリエイティブを見事に掛け合わせていくGOの手腕により、そのクライアントの業績が目覚ましく伸びていく事例を目の当たりにしていたのです。
例えば、ある化粧品会社の組織改革やIRをリンクアンドモチベーションが担当していて、GOが同社のロングセラーブランドの新たなコミュニケーション戦略を立案し、実行したことがありました。
三浦:長年にわたって培ってきたブランド資産を有効に活用するために、女性向けの化粧品の広告ビジュアルに男性を起用して、ジェンダーレスなコミュニケーションを図った事例ですね。一連のキャンペーンの結果として、すべてのジェネレーション、すべてのジェンダーにおいて使えるというメッセージを訴求できたことで、売り上げを大きく伸ばすことに貢献できました。
坂下:リンクアンドモチベーションでは、組織状態を診断するだけでなく、採用・育成・制度・風土に関する変革ソリューションをワンストップで提供しています。
大手企業をご支援する機会が多いのですが、企業を取り巻く環境は大きく変化しつつあり、事業のトランスフォーメーションに向けた組織風土変革が喫緊の課題となっています。まさに従業員の心に火をつけることが求められるなかで、GOとタッグを組むことで、クリエイティブの力で従業員の心を動かすことができる。そして、大手企業における真の変革を積み重ねることで、日本が世界の牽引役へ変貌を遂げることができる——。すでに連携を始めておりますが、私の確信は揺るぎないものとなっています。
組織風土の変革からアプローチし究極のトランスフォーメーションへ
——これから先に両社の提携によって生まれるシナジーについて、もう少し詳しく教えてください。三浦:GOはリンクアンドモチベーションと一緒に、他にはない「新しい型」をつくりたいと考えています。
坂下:そうですね。リンクアンドモチベーションの得意とする、経営学や心理学をもとに科学的に変革を起こすアプローチと、GOの得意とする感情を動かすクリエイティブ。まさに「合理」と「情理」を組み合わせたオンリーワンの支援によって真の風土変革を実現したいですね。
三浦:私は近年、企業の規模が大きくなればなるほど、変革のキードライバーは組織風土であるということを痛感してきました。私たちは今回の業務提携により、「組織風土を変える」ということから抜本的に取り組んでいきたいと考えています。
GOは、クリエイティブというものを「人間の感情にアプローチすることによって課題を解決する力」と定義しています。リンクアンドモチベーションならではの合理によって導き出された組織変革の型に、感情へのアプローチを知り尽くしたGOの言語化やデザイン、クリエイティブの力を注ぎ込み、企業そのもののトランスフォーメーションの本丸である組織風土の変革から取り組んでいきたいと考えています。
そして、企業の内部にも外部にも企業そのもののトランスフォーメーションを浸透させていきたいのです。その先にあるのが、あらゆるステークホルダーから会社のことを信頼してもらう・尊敬してもらう・愛してもらうという企業ブランディングの完遂です。そのような企業を増やしていくことが、未来の日本のエネルギーを高めることにつながると考えています。
坂下:これからの企業は、人間をうまくアトラクトできるかどうかによって命運が左右されると言っていいでしょう。40年には、国内で労働力人口が1,100万人も不足するというデータもあります(※2)。当然のことですが、消費者人口も減っていきます。そうした未来を見据えて、今から人間に信頼してもらう・尊敬してもらう・愛してもらう企業へと着実にトランスフォームしていくことこそが、存続と成長のキーポイントになると考えています。
※1 ITR「ITR Market View:人材管理市場2024」従業員エンゲージメント市場:ベンダー別売上金額およびシェア(2017~2023年度予測)
※2 「未来予測2040 労働供給制約社会」リクルートワークス研究所
さかした・ひでき◎リンクアンドモチベーション 代表取締役社長。1991年、リクルートに入社。人材総合サービス事業部にて組織人事コンサルティングに携わる。2000年、創業メンバーとしてリンクアンドモチベーションに参画し、取締役に就任。13年から現職。
みうら・たかひろ◎The Breakthrough Company GO 代表取締役 PR/CreativeDirector。2007年、博報堂に入社してマーケティング、PR、クリエイティブの3領域を経験。TBWA\HAKUHODOを経て、17年に独立。電通出身の福本龍馬と共にThe Break-through Company GOを設立。