IFT 7は2025年1月11日に実施される予定であり、そのデビューフライトでは、第2段宇宙船がはじめてタワーアームでキャッチされる可能性がある。
推進剤補給機「タンカー」は全長150m
スターシップはペイロード(ヒトや機材などの荷物)を地球周回軌道(LEO)に到達させた時点で、他のロケットと同様、その推進剤はほぼ空になる。そのためミッションを継続するには、「タンカー」と呼ばれる姉妹機から推進剤の補給を受ける必要がある。このタンカーは「スターシップ・ブロック3」とも呼ばれ、マスク氏はその飛行テストを1年後(2025年11月)に行うと表明している。タンカーはブロック2よりさらに26m高くなり、全長150mの史上最大の機体になる。重量は7000トン、推力は1万トン、ともにブロック1の1.4倍に達し、LEOへのペイロードは200トン以上になる。それはファルコン9の約10倍におよぶ。
ただし、多岐にわたるスターシップの開発工程のなかで、タンカーによる推進剤補給は特に難易度が高い。スターシップの燃料である液化メタンはその温度をマイナス162度以下に、酸化剤である液体酸素はマイナス183度以下に保つ必要があり、もしそれらが機内に漏洩し、沸点を超えて瞬く間に気化すれば、場合によっては機体が内側から破壊される可能性がある。また、膨張した気体が無制御のまま機外に噴出すれば、それが推力となって軌道が偏向するだろう。
極低温の推進剤を補給する作業は地上においても厄介な作業であり、宇宙空間での実施はISSのモジュール以外にあまり例がないが、スターシップ1機を月に送るにはタンカーによる給油を4回から10回程度行う必要がある。