従来の宇宙船では大気圏に再突入するとき、通信が途絶してブラックアウト状態になる。しかし、軌道上にスターリンク衛星を多数配置するスペースXの場合、機体から発信されるテレメトリ(遠隔測定)データや映像は途切れることなく地上局に届く。重要なのはこのデータであるため、着水した第2段宇宙船の機体自体は回収されることなく海に沈められた。
前回までの5回のテストはすべて現地時間の午前中に打ち上げられたが、今回の打ち上げは16時に行われた。これはインド洋に着水する宇宙船を、日中の光のもと観測するためだ。地球を55%周回した第2段宇宙船は打ち上げから65分後、予定地点に精度高く着水。その様子は予定ポイント近くに配備された無人ブイのカメラによってライブ配信されている。
次回テストから新型「ブロック2」へ移行
スターシップの飛行テストを実施するにはFAA(米連邦航空局)の許可が必要となる。その認可がスムーズに降りないことにマスク氏は苛立ち、規制当局によるオーバーレギュレーション(過剰規制)だと批判し、主にFAAとの対立を深めてきた。しかし、トランプが次期大統領に決まり(11月5日)、マスク氏が政府効率化省のトップに就任(11月13日)すると立場が逆転。マスク氏の事業を監視してきた政府系組織をマスク氏が監督することになった。今回のIFT-6が前回テストからわずか37日で実施されたのはこうした事情が影響したと思われる。
さらに11月20日、FAAはスペースXの要望に応じ、年5回としていた飛行テストを25回に増やすことを承認。これでスペースXは月2回以上のペースでスターシップを打ち上げることが可能になった。そのテスト実施には、発射台タワーへのブースターと第2段宇宙船の捕獲着陸も含まれる。